第667話結愛の本領発揮

 メールの内容は・・・


『そーちゃん、私とそーちゃんが恋人になったこと、あの虫に言ったらダメだからね?』


 という何度も結愛に言われてる上に俺だって初音に元々言う気はないことを改めて言ってきた、しかもメールで。


「わ、わかってるって、結愛──────」


 俺が結愛に返答しようとしたところで、結愛はめいっぱい首を振った。

 あ、あぁそうか、初音が目の前にいるのに不自然な行動をするのはまずいか。

 俺は改めて自分が浮気しているという今の状況を理解し、改めてメールで答える。


『わかってる、初音には言わない』


 俺がそうメールを返信すると、スマホ画面を見ている結愛はくすっと笑うと、スマホを持っている右手の親指でスマホの側面の出っ張っているところと、左手でホームボタンを押し・・・


`パシャ`


 という音を小さく響かせた。

 ・・・ん?


「ぱしゃ・・・?」


 するとまたも俺のスマホから通知音が鳴り・・・


『これで言い逃れできないね・・・そーちゃん❤︎』


「ぃっ・・・」


 ・・・別に世界最悪のケースとして初音に浮気がばれたとしても結愛と浮気なんてしてない、なんていう嘘を言う気はなかったけどなぜか嵌められた気分だ。

 結愛は今までこういう手法は使ってこなかったからか・・・?

 ・・・いや、結愛恋人になったからこれから本領発揮ってことか。

 結愛は今までも確かに全力で俺にアプローチをしてきていた・・・が、それはあくまでも結愛からしたらとしての範疇を超えていなかったんだろう。

 これからはとして接してくるってことだな。

 ・・・今までも十分幼馴染としての範疇は超えてたけどな!!


「そーくん?どうしたの?」


 そろそろ不審に思ってきたのか、母さんの方に意識を割いていた初音が俺の方に意識を向けてきた。


「なな、なんでもない!」


 俺はすぐにスマホをポケットにしまい、何もしてなかったことをアピールする。


「・・・・・・」


 初音が何かを探るよう目で俺のことを見てきている。

 俺はこういう初音の目がとても苦手なため、初音から目を逸らす。


「・・・・・・」


 しばらくすると、初音は俺から目を逸らし結愛の方を向いた。

 ・・・が、流石というべきなのか、結愛は初音に見られているからといって全く何も動揺している様子がない。


「そーくん」


「は、はいっ!」


 こ、このタイミングで話しかけてくるってことは・・・まさか。


「何か飲み物とかいる?」


「・・・え?の、飲み物?」


「うん、今日あんまり飲んでないでしょ?」


「あ、あー、あぁ」


 俺は言い方を考えずに言うと拍子抜けな初音の質問に、少し虚をつかれてしまった。


「何がいい?」


「え、じゃ、じゃあ普通のお茶で・・・」


「うん」


 初音はそう端的に返すと、キッチンに向かった。

 ・・・心臓が!心臓が持たない!!

 こ、これが浮気者の心情なのか・・・!

 ことあるごとに疑ってしまう・・・今は耐えろ、耐えるしかないんだ・・・!


「・・・・・・」

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