第666話変わった霧響
「お母様!私の話も聞いてください!」
「ん〜?」
俺たちだけで話しているのが気にかかったのか、霧響がようやく話に割って入ってきた。
「お二人だけでなく、私もお兄様と婚約したいんです!!」
「うんうん、そうだね〜」
「〜〜〜!!子供の言うことって聞き流さないでください!!私だって!もう!子供じゃないんです!!」
客観的に見るとどう見ても霧響が子供にしか見えない。
なんならこんな霧響は初めて見る、ぐらいのレベルだ。
「きーちゃん、きーちゃんは明くんの兄妹なんだから婚約なんてしなくても良くない〜?明くんが初音ちゃんと結愛ちゃんどっちと結婚するにしても、初音ちゃんも結愛ちゃんもきーちゃんが明くんの近くにいるぐらい許してくれると思うよ?赤の他人ならともかく明くんと血の繋がりを持った兄妹なんだしね!」
「確かにお兄様と一緒にいられるのは幸せなことですが、私は生まれつきのものではなくお兄様に認めてもらった上で一緒にいたいんです、つまり婚約です!お兄様と同じ血がこの体に流れていると思うだけで光栄なことですが、そのせいでお兄様と婚約できないようなら今すぐこの血を全て抜きます!そうすればなんの問題だってないです!!」
「・・・きーちゃん、変わったね」
「・・・変わった?」
「ちょっと前までは明くんに対して婚約したいってはっきり言えなかったのに今はこんなにはっきり言って・・・きーちゃんの成長に泣いちゃいそうだよ〜!!」
母さんは本当に声を震わせながら言う。
・・・それよりも母さんが前から霧響の俺との婚約願望に知っていたことについて驚きだ。
知ってたなら俺に教えてくてくれても良かったと思うんだけどな・・・
まぁどちみち何も変わらなかったか。
「そ、そんなこと今は関係無いです!それに、お兄様に隠し事ならお母様だって────なんでもないです」
霧響は何かを言いかけたところで、それをやめた。
・・・ん?隠し事・・・?
「と〜に〜か〜く!明くんと婚約したいなら、きーちゃんは現実的な方法を用意してきてね!」
「血を抜くのだって現実的ですよ!」
「そうかな〜?」
「そうに決まってます!」
「じゃあそうなのかもね〜♪」
「〜〜〜!!絶対に思ってないじゃないですか!!」
・・・雰囲気だけ見れば親子の会話なものの、会話内容はとても親子とは思えない内容をしている。
それにしても霧響が逆上しないように誤魔化してはいるけど母さんが俺と霧響の婚約なんていう意味のわからないことに反対みたいでよかった。
その後も母さんと霧響はそんなやりとりを繰り返している。
「そーちゃんそーちゃん!ちょっと良いかな?」
結愛が小さな声で話しかけてきた。
「ん?」
と思ったらその直後、俺のスマホから通知音が鳴った。
俺が結愛の方を見ると、結愛が小さく頷いたため、このメールを見ろということだと認識する。
通知画面からメールを開いてみると、案の定そのメールは結愛からのものだった。
・・・本当にちょっと前に初音に消されたはずなのに当然のようにメールを送られることに少し恐怖を覚えつつも、この距離でメールを使うことに疑問を覚えてもいる。
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