第665話総明の父親について
俺がリビングに戻ると、相変わらず初音と結愛は仲が良い設定の演技をしていて、霧響がその光景を不思議そうに見ている。
「・・・あっ!」
俺がリビングに来たことに気づいたのか、結愛が俺の方に微笑みかけてきた。
笑顔自体はとても良いんだけどその笑顔の理由が俺の浮気から来てると考えるとちょっと思うこともある・・・
いや、あの選択は間違ってない・・・!
「明くん?どうかしたの〜?」
「な、なんでもない」
俺は浮気したことに若干思うところを持ちつつも、とりあえずテーブルの前にある椅子に着いた。
「・・・あ、そういえば母さん、父さんは?土日って仕事じゃなかったはず」
今日は日曜日だから、少なくとも俺が転校する前通りなら、父さんは土日は休日だ。
「・・・えっ?お父さん?」
母さんはなぜか少し動揺したように聞き返してくる。
「お父さんは今ちょっと色々と忙しい、みたいだよ?」
声音は明るいが、明らかに動揺している感じがする。
「忙しいって、父さんは今どこに・・・?」
「んー、どこだろうね〜・・・本当に、どこに行っちゃったんだろうね〜、でも大丈夫だよっ!きっとすぐに帰ってきてくれるからねっ!明くん!」
「は、はぁ・・・?」
よくわからないが、まぁすぐに帰ってくるなら問題ないか。
多分仕事とかだろうし。
休日に仕事っていうのも珍しいけど・・・まぁ一年に一回ぐらいはそういうことがあってもおかしくはないか。
「・・・・・・」
「あの、そ、そーくんのお母様!」
「ん〜?なぁ〜に〜?」
初音が緊張し切った様子で母さんに話しかける。
「お、お母様は、その・・・ど、どんな女の子とそーくんが結婚して欲しいとかあったりするんですか・・・!?」
「なっ・・・」
なんてことを聞くんだ!しかも俺本人が目の前にいる時に・・・
母さんがどう答えても俺が恥ずかしすぎる・・・!
「ん〜?あるよ〜?」
「えっ!?どんな女の子なんですかっ!?」
俺の母親に直接情報収集できる珍しい機会だからって必死すぎるだろ・・・!
まぁ俺も仮に初音のお母さんと会うなんてことになったら初音みたいに・・・いや、逆にずっと緊張しまくってカタコトで喋るぐらいになるのかもしれないな。
「それはね〜・・・秘密♪」
「そんなぁ〜」
「それを言っちゃったら答えになっちゃうからだ〜め♪」
「は〜い・・・」
初音は元気よく、だが落ち込んだように言う。
・・・いや、誰なんだ。
初音が「そんなぁ〜」なんて言うの初めて見たぞ。
「あっ!じゃあそーくんのお父様はどんな人なんですか?」
「明くんのお父さんはね〜、ん〜?ちょっと明くんに似てるかな〜?」
「・・・え?」
それを聞いて真っ先に驚いたのは俺だった。
「俺と父さんは全然似てな───────」
「確かにそーちゃんと似てるかも〜」
・・・え?
「ゆ、結愛まで何言ってるんだ!」
別に父さんのことは嫌いなわけじゃないけど似てると言われるとどうも反論したくなってしまう。
「なんて言うのかな・・・普通に生活してる時は普通なんだけど、私がどうにかしてあげないとっていう場面がある感じかな・・・あっ!別にそーちゃんのことを貶してるわけでもそーちゃんのお父さんのことを貶してるわけでもないんだよ?」
完全に貶されてるようにしか聞こえなかったな。
「貶してるだろそれ!」
「貶してないよっ!それもそーちゃんの魅力なんだから!」
「魅力・・・?」
「うんっ!それもそーちゃんの魅力の一つだからねっ!」
「・・・・・・」
うっ・・・
俺はフォローされているはずなのに、なぜか悲しい気持ちになった。
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