第664話怒涛の電話ラッシュ

 その後俺と結愛は初音に不自然に思われないために、時間をずらして俺の部屋から出ることにし、まずは結愛が俺の部屋から出た。

 ・・・やってることが本当に浮気してる男の所業だが、これはまぁ仕方がない。

 許してくれ、初音・・・

 俺が心の中で初音に懺悔していると・・・


`プルルルル`


「・・・電話?」


 ちょっと前に初音に改めて初音以外の電話番号は消されたはず・・・俺は表示されている電話番号が誰の電話番号なのか知らないため、とにかく電話に出てみることにした。


「はい」


『うわっ、スリーコールで出た、きもっ、そんなに暇ならすぐ帰ってきたらどうなの?死んだらどう?』


`ピッ`


「・・・は?」


 疑問。

 なんだ今の電話は・・・声と口調からして小姫さんみたいだったな。

 なんで電話がかかってきて電話に出ただけでここまで言われないといけないんだ。

 ・・・でも帰ってきたらみたいなことも言ってたか?

 どういう意味──────


`プルルルル`


「ま、また電話?」


 また小姫さんか・・・?

 と思ったが、どうやらさっきとは電話番号が違う。

 誰か知り合いだったとしても連絡先が初音以外全て削除されている今、電話番号と紐付けして登録していた名前も消えているため、相変わらず表示されるのは電話番号だけだ。

 万が一重要な電話だった場合があるかもしれないため、俺は電話に出る。


「はい」


『先輩!』


「・・・あ、あゆか?」


『そうですそうです〜!』


 次から次に・・・一体なんなんだ。


『せんぱ〜い、今どこですか〜?』


「えっ、あ、あー、ちょっと外にいるんだ」


『家にいないんだから外なのは聞かなくてもわかりますよ〜、なんか答えたくないことがあるから誤魔化してます〜?』


 別に最悪バレてしまっても問題はないんだろうけどできることなら実家の場所と実家に初音と結愛と霧響と来ていることは黙っておきたい・・・


「そ、そんなことないって」


『ふ〜ん、いつ帰ってくるんですかぁ〜?』


「え、えーっと・・・」


 そうだ、そういえば今日はここに泊まることになったんだった・・・あゆにどう説明するべきか。


「ちょ、ちょっと迷子になってるからもしかしたらどこか近くのホテルで一泊するかもしれない」


『え〜?今電話できる環境があるんだったらネットでちゃちゃっと調べちゃってくださいよ〜』


「え、えーっとだな・・・あ、あー、で、電波がー」


『は、電波・・・?』


「あ、わ、悪い!で、電波が悪いみたいだからまた後で!」


『えっ、ちょっ、先輩!?』


`ピッ`


 俺はこれ以上あゆに何かを勘ぐられる前に電話を切った。

 ・・・相手があゆの場合電話する時間が長引けば長引くほど何かを勘ぐられそうだったからだ。


`プルルルル`


 本当に今日はいきなり良く鳴るな・・・

 そんなことを思いながら電話に出てみると・・・


「はい」


『死んだら?』


`ピッ`


「・・・え?」


 小姫さん・・・だよな?

 え?・・・死んだら?だけ・・・!?


`プルルルル`


 間隔が狭いな・・・また小姫さんか。

 流石に短い時間の間に2回も電話をかけられてしかもその2つともが暴言で挙げ句の手には懲りもせずに3度目の電話をかけられたりしたら怒ったりもする。


「あの!何度も何度も電話かけてきてその度に暴言言うのやめてもらっていいですか!?こっちだって人形じゃないから色々と思うところだってある!!」


『え、あっ、す、すみません、で、出直してきます・・・!』


 と、電話相手が弱々しく告げ・・・


`ピッ`


「・・・ん?」


 よく電話履歴を見てみると小姫さんとは電話番号が違う。

 それにあの声は・・・

 俺はすぐに悪いことをしてしまったと思い、すぐにかけ直し・・・


「わ、悪い天銀!さ、さっきのは天銀に言ったわけじゃないんだ!」


『・・・え?あ、そ、そうなんですか、よかったです、何かしてしまったのかと思いました』


 あろうことか俺の身近な人で一番暴言を吐かない天銀にあんなことを言ってしまうとは・・・反省だな。


「そ、そうじゃないんだ、本当、悪い・・・そ、それで、電話の要件はなんなんだ?」


『はい、朝から最王子くんと白雪さんと桃雫さんと霧響さんの姿が見えないので一応いつ頃に帰ってくるのかを聞いておこうかと思いまして』


「え、えーっと・・・」


 まぁ天銀になら本当のことを言っても何も起きなそうだな。


「実は急遽用事が入って帰るのは明日ぐらいになりそうなんだ」


『わかりました、防犯は任せてください』


「あ、あぁ」


`ピッ`


「・・・はぁ」


 俺は一つ溜息をつく。

 なんだか怒涛の電話ラッシュだったな・・・

 そろそろ戻らないと初音に怪しまれると考えた俺は、スマホをポケットにしまってリビングに向かった。

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