第662話結愛の覚悟

「えっ、ちょっ、ゆ、結愛!?覚悟って・・・!?その持ってる物が関係してたりしてないよな!?」


「もちろん」


「よ、よかった─────」


「関係してるよ?でないと今持ち出したりしないよ」


 一瞬見えた光に蓋をされてしまう感覚。

 ・・・わかってたけど、わかってたけど!

 それが関係あるなんて信じたく無いだろ!!


「ま、待て、お、落ち着け?な、何が望みなんだ?」


「婚約に決まってるよね」


「そ、それ以外で!」


「結婚かな?」


「・・・そ、それ以外でお願いします」


「本当は順序を踏んですべきことだけど、そーちゃんがその順序をそれ以外で片付けるなら・・・子供づくり」


「そ、それ以外で─────」


「やっぱりそーちゃんにはこうした方が効果的みたいだね」


「っ・・・!」


 いや・・・確かに効果的かもしれないけどそれは人の心を無視して刃物なんて危ないものを出されたら誰だってこうなるだろ!


「ま、待ってくれ、刃物で手に入れたものなんかに意味なんてないだろ?」


「それを今更言うのはお門違いだよ?そーちゃんがそうしないと私の想いを理解してくれないから、私はこうしてるの、本当はこんなことしたくないんだよ?」


 本当はこんなことしたくないと言いながら俺の左足首に刃物を添える。


「な、何をする気なんだ!?」


「・・・片足を切るよ」


「はぁ!?」


 そう言いながら俺の左足首に手を添える結愛の手は微かに震えていた。


「ゆ、結愛!結愛だって本当はこんなことしたくないんだろ?なら─────」


「したくないよっ!でもこうでもしないと・・・そーちゃんは私の想いをわかってくれないんでしょ?」


 そう言いながら本当に覚悟を決めたのか、手の震えが無くなった。

 ・・・ここで自分が助かるために「結愛の提案を受け入れる」というのは簡単だが、それは浮気するということだ。

 ・・・それに、まだ結愛が本当は俺の足首なんて切れないっていう可能性もある、前みたいに直前で止めてくれるかもしれない。

 そんな希望を抱くも・・・結愛は俺の足首に刃物で切り込みを入れた。


「い”っ・・・」


 ・・・が、我慢だ、我慢・・・そろそろ結愛が手を引いてくれるはず。

 そして今度はその切り込みから少量の血が出るほど切られる。


「痛っ!!ま、待て待て!待ってくれ!!」


 俺が悲痛の声と共に結愛に待ってと言ったからか、結愛は一度刃物に入れていた力を抜いた。


「痛いよね・・・」


 と、同情するように。

 いや、同情するぐらいならやめてくれよ!


「ゆ、結愛!ま、待ってくれ?」


「・・・待ってるよ?」


「いやっ!その・・・な?」


「な・・・?」


「・・・ほ、保留!保留ってことで・・・!」


「ダメだよ」


 そう言って結愛は改めて刃物に力を入れようとする・

 ・・・が。


「・・・あ、もっと簡単な方法あったね」


 結愛は何かに気づいたと思ったら─────途端、服を脱ぐ素振りを見せた。

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