第661話被虐嗜好疑惑
その後初音は俺が脱がせた服を着直すと・・・
「そーくん、今の約束、忘れないでね」
そう言い残すと、初音は部屋から出て行った。
・・・最悪だ、本当に最悪だ。
婚約なんて壮大なものを条件に俺が要求できたのが子供に対する価値観変革だけ・・・俺自身に対してのことは何も変えてもらえないのか。
・・・いや、仮に将来初音との間に子供ができることになったらその時はその子供に胸を張ってお前のことを俺は守ったみたいなことをカッコつけて言うことにしよう。
「・・・そーちゃん!」
「え、あ、はい!」
「そーちゃん、やっぱりあんな虫と婚約なんて絶対ダメだよ、さっきの聞いたよね?虫はそーちゃんとの間に産まれた子供でもそれが女の子なら見境なく殺すの、そんなのと婚約なんて絶対にしない方がいいよっ!」
「そ、それは・・・まぁ」
そこだけを突かれれば絶対にそうだ。
さっきも考え至った通り、そこに関しては俺的に結愛の方が正しい。
「それは?前にも聞いたかもしれないけど、私があの虫に劣ってるところが他にあるなら教えて欲しいよ・・・」
「お、劣る劣らないとかじゃ無いだろ・・・?」
「・・・あんまりそーちゃんにこんなこと言いたく無いけど、揚げ足を取るぐらいしかすることがないってことは、想いの強さっていう面では、私とあの虫の間にそーちゃんはあんまり差はないって思ってるってことだよね?」
「っ・・・」
俺は的確な指摘に、半眼を閉じてしまう。
差・・・
「・・・ねぇそーちゃん、今ふと思ったんだけど」
「ん?」
「もしかしてそーちゃんって、被虐嗜好だったりするのかな・・・?」
「ひぎゃく、しこう・・・?」
ひぎゃくしこう・・・被虐?
被虐・・・嗜好?
・・・被虐嗜好!?
「は、はぁ!?何言ってるんだ!そんなわけないだろ!」
「だ、だよね・・・!で、でも、そーちゃんにとって私とあの虫の差って言ったら何かなって考えたらやっぱりそーちゃんを傷つけてるかどうかだと思っちゃって・・・」
・・・ん?何か壮大な誤解をされてる気がするぞ・・・!?
「い、いやいやいや!お、俺だって好きで傷つけられたりしてるわけじゃないからな!?」
「でも、そーちゃんが頑なに私のことを選んでくれないってことは、残念だけどそうやって傷つけたり脅したりした方がそーちゃんには効果的なのかな?」
「・・・え」
「むしろ・・・私とあの虫のアプローチの仕方の違いって言えばそれだけだよね?だったら私もそうした方がいいのかな?」
お、落ち着け、前にもこんなこと言ってたけど結愛は結局俺のことを殺すなんてことはできなかった、それを視野に入れるのは申し訳ないけどこっちだって命がかかってるんだ。
「ゆ、結愛?結愛は良くも悪くも優しいからそんなことできないと思うんだ、だから無理をせず──────」
「だから、私もそろそろ覚悟を決めないとね」
「覚悟・・・?」
結愛は後ろに手を回すと、銀色に輝く獲物を取り出した。
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