第659話深読み?
`コンコン`
「────えっ!?」
部屋のドアからノック音が鳴った。
ま、まさか・・・
「明くん?」
母さん!?
ま、まずい!こんなところ母さんに見られるわけには・・・
「今、忙しいかな?」
「えっ?あ、あー、い、忙しいっていうか・・・」
俺が誤魔化そうとしたところで・・・
「はい!忙しいです!」
結愛が割って入るように答えた。
「そっか〜、初音ちゃんもいるの?」
「はい!」
「ふ〜ん♪頑張ってね〜」
そう言い残すと母さんはドアを開けずに階段を降りていったらしい。
・・・何の用だったんだ?頑張って・・・?何をだ?
「・・・・・・」
「・・・・・・」
俺がその言葉の意味をわからずにいると、初音と結愛はいつになく神妙な顔つきになっている。
「ふ、2人とも?何をそんな神妙な顔つきになってるんだ?」
「・・・そーくん、事情が変わったよ」
「え?」
「・・・そーちゃん、今すぐ私とこの虫どっちと子供作るか決めて」
「えっ!?」
どうなってるんだ!?
いくらなんでも怒涛の展開すぎる。
さっきまでもだいぶ飛んだ話をしてたけどそれにしたってこれは飛びすぎも良いところだ。
「なんで子供なんて話になってるんだよ!さっきまでテストがどうのって話してただろ!?」
「そうだけど、状況が変わったの」
「か、変わった?」
「うん、ここで私がこの女に負けてそーくんと子供を作れなかったなんてそーくんのお母様に思われるわけにはいかないの、わかるよね?」
・・・ん?なんでここで母さんが出てくるんだ・・・?
結愛も今初音が言ったことに対して何も疑問に思ってないみたいだが、俺には全く意味がわからない・・・本当に何の話をしてるんだ?
「とにかくそーくん、ここまで言えばもうわかってると思うけど」
え、わかってない・・・
「ここまで来たら、もう子供を作るしかないの」
俺はそもそもどこまで来たのかすら理解できてないんだが・・・
でもここまで言えばわかってると思うけどと言われた中「え、どういうことだ?」とは聞きにくい。
「あ、あー、え、えーっと・・・な、何も子供は作らなくて良いんじゃないか?」
俺は状況がわかっているフリをし、とりあえず一番回避したい子供を作るというところを控えめに否定する。
・・・が。
「は?ふざけてるの?なんでこの状況でそんなことが言えるの?」
・・・あ。
「そーちゃん、どんな理由があるのかわからないけど今それを言うのはダメだよ・・・」
・・・俺は知ったかぶりをしてしまったことを後悔し、素直に初音たちに今の状況を聞いてみることにした。
すると、とんでもない返答が返ってきた。
「えっ!?わかってなかったのっ!?さっきそーくんのお母様が忙しいのかって確認してきてたでしょ?」
「え?あ、そうだったな」
「で、私たちがそーくんのお母様を放ってまで忙しい用事、しかもこの婚約がかかってる状況でってなると・・・子作りしかないよね?」
「・・・は!?」
え?・・・いや、え?
やっぱりいくらなんでも飛躍しすぎだろ!
俺のこの感覚は間違えていないはず・・・多分。
「で、そこまではそーちゃんのお母さんもわかってるだろうから、問題は・・・そーちゃんがどっちと子供を作りたいと思ってるのかってことなの」
「はぁ、まぁそんなのそーくんに聞くまでも無いんだけどねー」
「・・・・・・」
いや、絶対に違う、母さんがそんな変な風に聞いたとは思えない。
多分普通に忙しいのかどうか聞いただけなのにこの2人が変に深読みしてるだけだ。
でもそれを今言ったところで納得してもらえそうにない。
「そーくん、もう本当にわかってるよね?」
「そーちゃん、さっき私が2人の時に言ったことも踏まえて考えてね」
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