第645話想いは命
「・・・え」
「私の話してる次元はそういう次元の話なの、そーちゃん私の想い低く見積りすぎじゃない?」
「・・・ぁ」
さっきから俺が思考してたのはあくまでも`普通`の場合のことばかりで、初音とか結愛とか俺の周りにいる人たちには間違っても当てはめられないことばかりだ。
「・・・・・・」
「で、そーちゃん、どういう状況かわかったよね?わかった上で、もう一度聞くけど、私が死んででもその虫のこと好きなの?」
「そーくん、迷う必要無いよ、その女はそーくんからの寵愛を私から奪えなかったからってそーくんの優しさに付け込もうとしてるだけ、それでこの女が死んだとしてもそーくんが罪悪感を覚える必要はないからね」
「ざ、罪悪感がどうとかじゃなくて・・・ひ、人が死ぬって言ってるんだぞ!?目の前で!!」
「それがどうかしたの?」
「ぇっ・・・?」
「その女が死ぬって言ってるからって浮気が許されるとでも思ってるの?」
「そっ・・・そ、そうじゃないけど」
「そうじゃ無いなら早く私に想い伝えてよ」
「・・・・・・」
絶対におかしい。
確かに浮気するのは悪いことだけどだからってそれと死ぬのを天秤にかけるって言うのもおかしい。
かといって初音を説得するのは無理だろう。
なら・・・
「な、なぁ、ゆ、結愛・・・?」
「・・・なに?」
「お、俺が誰を好きでも、結愛が死ぬ必要は──────」
「あっ!3人ともこんなところにいたの〜?」
「・・・え?」
洗面所の入り口から、母さんが場違いなほど日常的な声で話しかけてきた。
・・・本当にちょっと空気を読んで欲しいな。
────って、一応2人は母さんの前では仲が良い設定だったのにこんな空気感のところに来られたら・・・
「え〜桃雫さんそれでメイクしてないんだ〜可愛いね〜」
・・・ん?
「白雪さんもそのお洋服可愛いねー」
と、あたかもずっとその話をしていたかのようにいきなり話を展開しだした。
「────あっ、そーくんのお母様!」
そして初音は話していて母さんが来たことに気づいていなかったと言うような素振りを見せる。
・・・無論、演技だ。
「あっ、邪魔しちゃったかなぁ〜?」
「いえいえ!全然そんなことないですよ!」
結愛は母さんのフォローをする。
・・・本当にここがさっきまで生きる死ぬを話してた場所なのか・・・?
さっきまでのことが嘘だったんじゃないかと思えるぐらいいきなり明るい雰囲気になった。
「良かった〜、実はきーちゃんもさっき来てくれたから一応伝えておこうと思ってね?」
「っ、そうなんですかぁー、霧響ちゃんが〜」
「霧ちゃんも来たんだ〜」
初音は一瞬戸惑ったような、結愛は純粋にそんな声を上げた。
「わ、私先霧響ちゃんのところ行ってますね〜」
初音は焦ったようにこの場を後にした。
「え、ちょっ、初─────」
「明くん?女の子がちょっと浮かない顔で場を後にしたらそっとしておいてあげないとっ!デリカシーだよ!」
「え、あ、あぁ・・・」
そ、そういう話なのか・・・?
・・・少し疑問ではあるがその後しばらく、結愛は本当にさっきまでのことをなかったかのようにして母さんと楽しく会話していた。
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