第644話これならできるよ
「そーくん、私のこと好きだよね?」
「なんでわざわざ諭すの?本当にそーちゃんが自分のことを愛してくれてる自信があるならわざわざ諭したりしなくていいはずだよ?」
「は?これは諭してるんじゃなくて、照れ屋さんなそーくんの背中を押してあげてるだけ、そーくんの性格もわからないなら何も口出ししないで欲しいんだけど、っていうかなんでも良いから関わらないで欲しいんだけど」
「・・・・・・」
俺に回答を求めてきている割には一向に俺が話すすきがなく、今も現在進行形で口論が続けられている。
仕方ない・・・ここは。
「ちょっと落ち着いてくれ!!」
と、俺は珍しく男らしく大声で叫んだ。
・・・なんで自分で男らしくのところに珍しくなんてつけないといけないんだ。
いや、そんなことよりも・・・
「ま、まず、春にも言ったように、俺は初音と恋──────」
`カチャ`
「ぇっ…」
結愛は俺の返答次第ではその包丁で何かをするという意思表示をするかのように、包丁を構え直した。
「何それ、脅しのつもり?そーくん、そーくんのことは絶対に守ってあげるから正直にその女に現実を教えてあげて?」
「えっ、で、でも───────」
「前のこともう忘れたの?その女は口だけ、そーくんのこと殺すなんて言っても前は泣きながら膝から崩れてたよね?」
「そうだね、私は虫と違ってそーちゃんを本当に愛してるからそーちゃんを殺すなんてことはできなかった」
「まぁ私は愛してるからこそ殺せるけど、それは別として、聞いたよね?その女が包丁を構え直したところで──────」
「でも」
結愛は初音の言葉を遮るようにして口を開いた。
「これなら私、できるよ?」
そう言って結愛は構え直した包丁を────反転させ、結愛自身に向けた。
「えっ、ちょっ、結愛!?」
「何?そーちゃんが本当にそんな虫のことを好きなら私なんてどうなっても関係無いよね?そーちゃんはこの虫のことを選んで、私のことなんてどうでも良いんだもんね?私が今目の前で死んでもそーちゃんにとってはなんの関係もないもんね?」
「そ、それとこれとは話が違うだろ!?」
「違わないよ、私はそういう次元で話してるの」
・・・好きじゃないなら死ぬなんてどう考えても恋愛の範疇を超えている。
俺の感性は間違っていないはずだ、いくらなんでも極端すぎる。
少なくとも普通の恋愛なんていうものとはかけ離れ──────
「・・・そーちゃん」
「・・・・・・」
「前にも言ったけど・・・私の想い、舐めてるの?」
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