第642話前提条件

「・・・え?」


「なんで前提がその女と付き合う、なの?なんで堂々と浮気宣言してるの?」


「ま、待ってくれ、この話には続きがあるんだ、俺と結愛が年末まで付き合う代わりに──────」


 と、俺がこれから先の肝心なところを説明しようとするも・・・


「だからっ!前提が私以外の女と付き合うことが条件の提案なんて聞く耳無いって!!」


「そ、そこが大事なんじゃなくて、俺と結愛が年末まで付き合うことでその先は──────」


「何度言わせるの?私は浮気が前提のことなんて認めないって言ってるんだよ?そもそもそーくん自分が何言ってるかわかってるの?その女に良いようにバイアスかけられてるんじゃないの?そーくんが今言おうとしてることって浮気する代わりに────ってことだよね?もう一度自分が何を言ってるか自覚してから口開いてね?」


「・・・・・・」


 俺としてはとりあえず包み隠さず何を言われたかを説明したいけでこの提案を承諾する気は無────そうだ、それを直接言ってみよう・・・!

 今まではちょっと初音が怖すぎて自分の思ってることを無意識に奥に仕舞い込んでたけど、今こそ勇気を出すときだ。


「ま、待ってくれ、お、俺としてもこの提案を受け入れる気は無────!!」


 俺はまずは自分の考えをしっかりと伝えようとするも・・・


「っ、そーちゃん?」


「・・・ん?」


「受け入れる気がないってどういうこと?」


 結愛は初音の方を向きながら、それでも声だけは俺の方に向けながら言う。

 そして、顔を見るまでもなく怒りそうになるのがわかるような声音だった。


「あっ、いや・・・」


 俺はその圧にやられてしまう。


「そーくん、何?何か言うんじゃなかったの?」


「え、あっ、そ、その・・・」


 俺はさっきまで色々と考えていたことが一気に頭から飛んでしまい、何を言えば良いのかとテンパってしまう。

 ・・・なんでこんなところでだけ妙なコンビプレイを・・・!


「え、えーっと──────」


「そーちゃんが言いたいこと、私が代弁してあげる」


「・・・え?」


 と、いきなり結愛が俺の代弁をすると言い、口を開いた。


「そーちゃんと私が年末まで付き合う代わりに、もしその年末の時にそーちゃんが私とそのまま付き合いたく無いって言ったら、私はそーちゃんの恋人になろうとしないってこと」


「・・・・・・」


 ・・・本当に俺が言いたことをストレートに直訳してくれたな。

 まぁ俺が言いたいことと言うか正確には結愛が提案してきたことだから当然と言えば当然なんだけど・・・

 これを聞いた初音の反応は・・・


「無理」

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