第641話激情する初音
「ま、待─────」
・・・が、その直後。
「っ!」
俺の前に結愛が来て、俺に向けられた初音のナイフを自分の持っている包丁で受け止めた。
「ゆ、結愛──────」
「そーちゃんにまで刃物向けるとか本当にどうかしてるんじゃないの!?」
「恋人がいるのに恋人以外の女に触る方が悪いと思うけど?しかも私が一度やめてって忠告してあげてるのに、ね?」
「・・・・・・」
「そーちゃんが私に触れたいって思う正しいことをしてるのにそれでそーちゃんに歯を向けるなんて本当に頭おかしいんじゃないのって言ったんだけど」
・・・ん?
それはそれでなんか違う気がするけど・・・
「そもそもそーくんは私以外の女に触れたいなんて思わないし、それを前提に考えればさっきこんな女に触ったのだって私を助けるためだけど私はそれが不快だったの」
「なんでその前提が間違えてることは考えないの?」
「間違ってないから」
「根拠は?」
「愛」
「・・・・・・」
なんなんだこの会話は。
一見論理的に会話してそうに見えたけどその実ほとんどは感情的に話していることが最後の一言でよく分かる。
「・・・そーちゃん」
「・・・ん?」
「今、私はそーちゃんの恋人なんだよね?」
・・・ん?????
「え、ど、どういう事──────」
`プシッ`
「・・・えっ」
初音は俺の左肩に向けてナイフをちょうど掠れるか掠れないかぐらいのところを狙って投げた。
その狙いが的中し、ちょうど少しだけ血が出るぐらいに肌を傷つけられてしまった。
俺はいきなりの痛みに本能的に怯えてしまい、膝をついて右手で左肩を抑える。
「そーちゃ─────」
結愛が俺の名前を呼ぶよりも早く、初音が問いただしてくる。
「そーくん、説明してくれるよね?次は無いよ」
と、さっきまでとは違った意味の・・・
いや、さっき俺が初音の言うことを無視したことも相まって、それにプラスされて怖い目をしている。
少なくともそれが恋人を見る目じゃ無いことだけは確かだ。
「は、初音?ま、まずは落ち着いて─────」
「早くして」
・・・これは嘘をついたとしても意味はなさそうだな・・・
俺はとりあえずさっき会ったことも含め話すことにした。
「・・・え、えーっと、ま、まず、大前提として、お、俺は別に結愛と付き合ってない、ただちょっとさっき相談というか提案をされて・・・」
「えっ、そーちゃ─────」
「黙って」
結愛が俺に異論を挟もうとするも、初音の重く冷たい声がそれを静止する。
「・・・で、その提案っていうのが、年末まで結愛と付き合う代わりに─────」
`ドンッ`
初音は力強く一歩を踏み出し・・・
「ふざけてるの?」
激怒を含めた声でそう言った。
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