第640話歪んだ優先順位
「こ、これは・・・」
なかなか時間がかかりそうだな・・・
母さんと霧響が、主に母さんが霧響に約1ヶ月ぶりの再会だからなのか色々と話しかけている。
「お、お母様!わ、私はお兄様と──────」
「あー!もうなんでこんなに可愛いのっ!?きーちゃん!!」
と、抱きしめながら・・・
・・・よし。
この場に俺はいらないなということを感じ、俺はそっと家に戻りドアを閉めた。
当然鍵は閉めていない。
「・・・はぁ」
でもこれで、ようやく俺にもリビングという居場所が──────
`ガキンッ`
「・・・金属音?」
来る時この辺で工事なんてしてたか・・・?
でもまぁ人によってはちょうど昼ごはんが終わったぐらいの時間だろうし、近くで工事の仕事が始まってもおかしくはないのか。
`ドタタタッ`
`ガキンッ`
`バサッ`
`ドンッ`
「それで納得するにしてはうるさすぎるな!?」
1人でノリツッコミを入れてしまう。
・・・・・・。
「・・・ん?」
今度はいきなり静かになったな・・・えっ、まさか!
俺は何やら危ないものを感じ、すぐに音がしていた洗面所の方に向か─────
「んっ!」
「・・・・・・」
そこには包丁で黙々と初音のことを刺そうとしている結愛の姿と、珍しく受け身になっている初音の姿があった。
「えっ、ちょっ・・・え?」
俺はあまりにも衝撃的すぎる光景に、一瞬思考が固まってしまう。
って、そうじゃなくて・・・
「ちょっ!と、とにかく落ち着けって!」
俺はいつまでも初音のことを刺そうとする結愛のことを初音から遠ざけるために結愛の肩を抑えて初音から引き剥がす。
「・・・あ」
と、思ったが当然俺なんかが結愛に力で叶うわけもなかった。
「そーくん、何私以外の女のこと触ってるの?」
「・・・え?」
俺は助けようとしている初音から何故か怒り口調で言われてしまう。
っていうかなんで刺されそうになってるのにそんなに冷静なんだ。
「さ、触ってるっていうか、これは初音から引き剥がそうと─────」
「あ、じゃあ今すぐその女から手、離して?私が刺されることよりもそーくんが他の女のことなんて触ってる方が不快だから、しかもそれが私が理由なんだったら尚更ね?」
「・・・え」
刺されることよりも俺が結愛の肩を触ってる方が嫌って・・・どう考えても優先順位がおかしいだろ!
・・・が、俺も彼女と幼馴染が俺の実家で血祭り事件を引き起こすなんてところは見たくないため、初音には結愛を話すように言われたが、俺は結愛から手を離さずに結愛を初音から引き剥がそうとする。
「・・・そーくん」
「・・・ん?」
「刺されたいの?」
「・・・え?」
初音は結愛を一瞬だけ退け、俺にナイフを向けながら回転し、回転の勢いで俺の方に詰め寄ってきた。
・・・え?
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