第639話破られた願い
ー少し前ー
「だ、だからそんなの今の俺には関係無いって、しかもまだ物心も付いてない時の話だ」
そーくんは意味がわからないことを言う。
私はそんなそーくんにそーくんがどんな大罪を犯してしまったのかを伝える。
「じゃあそーくんは私が物心つく前に誰かに犯されてたとしても今には関係無いって言うの?」
「え、そ、そんなことは無い、けど・・・」
「そーくんはそれと同じで、今私に深い傷を付けたの」
「い、いや、今の初音の例えは体に傷を負った場合の話で、この話とは関係無──────」
「目に見える体は重要視するけど目に見えない私の心なんてそーくんにとってはどうでもいいってこと?」
「ち、違う・・・ご、ごめん」
そーくんはようやく自分が間違ってることを自覚してくれたのか、謝ってくれた。
でもその一度の謝罪だけであんな女に結婚願望を抱いていたことが許されるわけじゃない。
そんなのじゃ私の傷は癒えない。
「そーくん、いつも言ってるけどそーくんはもっと───────」
私はそれからそーくんに今回のことがいかに大罪かを説明した。
「─────わかった?そーくん」
「は、はい・・・わ、わかりました・・・」
そう言うとそーくんは下を向きながら出て行った。
「・・・本当にわかったのかな」
そう呟いて、私はそーくんが机の上に置いたあの女に対する結婚願望を抱いている紙を見つけ、それを手に持ち・・・
`ビリリッ`
当然破った。
「あんなっ!女が!いるからっ!」
`ビリリリッ`
「そーくんがっ!惑わされてっ!」
`ビリリリリッ`
「私もっ!こんなにっ!」
`ビリリリリリッ`
「そーくんにっ!不安に思わないといけなくなるのっ!!」
`ビリリリリリリッ`
「はぁはぁ・・・」
私は一旦深呼吸して落ち着くと、そのビリビリに破ったものを全てゴミ箱に捨てた。
・・・本当に世界が私とそーくんだけの2人だけで構成されてたらどれだけ幸せだったんだろうね・・・
そんなことを思いながら、私は洗面所に向かった。
「そーくんには可愛く見られたいから、やっぱり肌の保湿とか髪の毛とかはちゃんとしないとね♪」
そんなことを呟きながら、私が洗面所に向かうと・・・
「ふふんふんふ〜ん♪」
鼻歌混じりに洗面所で自分の髪の毛のシュシュを括り直している今一番会いたくない女と出会った。
・・・訂正、一生、いついかなる時も会いたくない女と出会った。
「・・・うわっ、虫・・・」
この女も私に気づいたらしく、すぐに髪の毛を一括りにした。
・・・相変わらず体だけはそーくんを誘惑するためだけみたいな体して・・・殺したい。
「・・・あ、そうだ」
私はこの女に精神攻撃を仕掛けるために、さっきしていたことを言う。
「さっきそーくんの部屋にあった`ゆめとけっこんできますように`って書かれてた七夕の紙ビリビリに破ったから」
「・・・ぇ」
この女は今にも泣き出しそうな声で困惑の声を上げた。
「なんで──────」
「なんで?決まってるでしょ?そーくんは私のだからだよ」
「・・・・・・!」
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