第630話いつもと違う初音と結愛
って、いや、それよりも!
「な、なんで結愛が───────」
「あっ!桃雫さん!こんにちはっ!そーくんの家で会えるなんて奇遇だねっ!嬉しいよっ!」
初音は今まで結愛に見せたことの無いような笑顔で言った。
・・・え?
「・・・は?いきなり何言ってんのむ───────・・・」
結愛はいつもの調子で初音に対して色々言おうとした口を俺の母さんのことを見て閉じた。
昔から結愛は俺の母さんの前でだけはいつも以上にいい子のフリをしていることが多かったため、今初音に対して暴言を吐くわけにはいかないと冷静になったのだろう。
「そ、そうだねー、白雪さんこんにちは・・・!」
結愛も初音に合わせるようにしてとびきりの笑顔で初音に挨拶した。
・・・心の中ではきっととんでもない戦争が起きているんだろう。
「あ、2人とも知り合いなの〜?それなら結愛ちゃんも!遠慮なく上がって!」
「あっ、い、良いんですか?」
「もちろん!結愛ちゃんは家族みたいなものなんだから!」
そう言って、母さんはやや強引に結愛のことを家に上げた。
そして、4人でリビングの椅子に座ることになった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
俺と初音と結愛の3人は、なんていうか・・・今まで感じたことのない感覚の中黙っていた。
・・・が、当然母さんがそんなことを気にするわけもなく・・・
「結愛ちゃん久しぶりだねー!」
相変わらずないつものテンションで、結愛に話しかけた。
「・・・はい!」
結愛は初音とこうして無言で向き合っていることを違和感に思っているのか、一瞬間があったが、すぐに母さんに返事をした。
「あっ!そうそう!でねー?今明くんとこの初音ちゃんが結婚したいって言ってるんだけど、結愛ちゃんから見て初音ちゃんはどんな感じの子なのー?知り合いなんだよねー?」
「えっ、あっ、は、はい、え、えーっと・・・」
結愛があからさまに口籠もっている。
いつもの結愛なら即答で「こんな虫の悪いところなんていくらでも出てくるよ」なんて言いそうだが・・・
「し、白雪さんは、成績が良くて学校でも人気者で生徒会に入ってるすごい人・・・ですよ!」
結愛はちょっと見る角度を変えるだけで作り笑顔だとわかる顔をしながら言った。
・・・貶すことは言わないにしてもここまで評価を上げることを言うとも思わなかったな・・・
「そう!結愛ちゃんみたいな可愛くて頭も良くて優しい子からもそんな風に見えてるならやっぱり明くんと結婚───────」
「で、でも、白雪さんは優秀すぎてそーちゃんとは合わないかなーって思います、そーちゃんはやっぱりもっと普通の人の方が合うかなーって、あっ!そーちゃんを貶してるわけじゃなくて、えっとえっと・・・!」
結愛がどうにか初音の意図を妨害しつつ、母さんが俺と初音が結婚をることを取り下げるようなことを言おうとするが、そうなると今度は俺が貶されるような形になってしまい、色々と大変そうな感じになっている。
・・・はぁ、4人でリビングに向かい合ってまだ5分も経ってないなんて・・・冗談だろ!?
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