第625話口答え

 当然のごとく俺はビジネスホテルなんてよくわからないため、初音にホテルの受付対応を任せる。

 普通こういうのは男がやるべきなのかもしれないけど、高校生でビジネスホテルなんて使える方がおかしい・・・はずだ。

 相変わらずだが、初音といると感覚が狂わされそうになるな・・・


「4階になったよ〜」


「わかった」


 部屋はどうやら4階にしたらしい。

 まぁ別にちょっと時間を潰すだけだから階層なんてどうでも良いけどな。

 ・・・とは思いつつも、やっぱりホテルとか行ったことのない建物の内装は気にしてしまう。

 たとえ2時間弱時間を潰すだけだとしても、やっぱり内装は重要だ。

 そんな思いを旨に、俺は割り当てられた部屋のドアを開けた。


「・・・えっ!?き、綺麗すぎるだろ!」


 まず俺が驚いたのは、その綺麗さだった。


「ビジネスホテルなんだからこのぐらい普通じゃない?」


 初音は特に驚いていないようだったけど・・・

 家具のほとんどが白で統一されており、それぞれの家具の大きさや幅にも統一感があって本当に綺麗な感じがする。

 ・・・俺の中のホテル像がラブホテルで埋まってしまってただけで、普通はこんなにもホテルは綺麗なのか・・・


「・・・でもここで2時間っていうのは流石にやっぱりちょっと長いな・・・」


 いくら綺麗でも綺麗なだけで2時間も過ごすのは絶対に暇になってしまうだろう。


「長くないよ」


「え、でも───────」


「私がそーくんから濃厚な子種を貰うにはね」


「・・・えっ」


「はぁ、本当にそーくんの将来が心配になっちゃうよ、こんな簡単に騙されちゃって・・・私が誰かとぶつかるなんてミスする訳ないでしょ?」


 ま、まぁ・・・確かに普通に歩いてる時に初音が他の誰かとぶつかってるところなんて見たことないけど・・・


「まっ、そーくんは未来永劫私とずっといるから、そーくんの将来は安心なんだけど・・・他の女に騙されないかだけが本当に心配だよ・・・」


 初音は本当に暗い声音で言った。

 ・・・いや、そんな暗い声音で言われても実は騙してたみたいなことを言われてすぐに「心配してくれてありがとう」とはならない。


「でっ!そんな私がいないとダメダメなそーくんの将来を確実に安泰にするためにも!私がここでそーくんの子種を貰う必要があるのっ!」


「そ、そんなの子供を作りたい理由として不純だろ!」


「は?何?今まさかとは思うけど私に口答えしたの?」


 初音は不機嫌そうに言った。


「い、いや、口答えっていうか、じ、自分の意見を言っただけで・・・」


 その後、その場は少しの無音が支配した。

 そして・・・


「・・・子種を貰う前に、きちんと教えてあげないとね」

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