第623話初音は用心深すぎる
「そーくんっ!早く早く!遅れたら一大事だよ!」
「遅れたらって・・・母さんに会いに行くのが昼の12時なのになんで朝7時から遅刻がどうのなんて話になるんだ!」
因みに行くところは俺の実家で、ここから俺の実家までは当然少しは距離があるけど、それでも12時に待ち合わせで朝7時に急ぐほどの距離じゃ無いことだけは断言できる。
なんなら11時手前でも大丈夫なぐらいだ。
「もし時間ギリギリに行って不真面目な女とか思われたらどうするのっ!?」
「仮にそうだとしても、だからってこんな早くに行ってもそれはそれで変人だと思われるに決まってるだろ!」
「じゃあいつ行けばいいのっ!?」
「そ、そうだな、普通に11時とか、それでも不安なら10時半とか───────」
「何言ってるの!?遅すぎるよっ!」
「遅すぎないって、俺の実家はそこまで遠くない!」
「そーくんの実家の場所も郵便番号とかその他諸々色々知ってるけどそれでももし遅れたらって時のこと考えると不安なのっ!だって今日一日失敗するだけでそーくんとの輝かしい将来が無くなるかもしれないんだよっ!?」
本当に俺の母さんに対してだけはとことん謙虚だな・・・
自分で言うのもなんだけど、むしろその考え方でいくと一番謙虚にすべきはその相手である俺のはずなんだけどな・・・
なんで俺に対してはこんなに謙虚さが無いんだ・・・
「だ、大丈夫だって、仮にちょっと遅刻してもそんなことで何か言うような人でもないし」
「もちろん神聖なそーくんを生み出した人だからそんなことで怒らないって言うのはわかってるけど、相手が怒らないからってこっちが不敬を働いても良い理由にはならないでしょ?」
これが本当に彼氏の母親に会いにいく彼女のセリフなのか・・・?
「ま、まぁ・・・そうだな」
ここまで強い意志があるなら流石に俺がちょっと言っただけじゃ変わりそうにないな・・・
「で、でも流石に7時って言うのは早すぎるから・・・九時ぐらいからにしないか?」
11時に譲歩することはできなくても九時なら・・・
「・・・そーくんがそこまで言うなら、わかったよ、じゃあ九時からね」
良かった・・・初音は納得してくれたみたいだ。
「・・・あっ!じゃあ九時までにそーくんの子種授かりたい!」
「・・・え?」
初音はいきなり何を言い出してるんだ・・・?
「だって!私がもうそーくんのお子を授かってるってなったらそーくんのお母様は私のこと無碍に扱えないでしょ?」
「ちょ、ちょっと待てよ、だ、だからってそんな──────」
「逃がさないからねっ!」
「ひっ・・・!」
俺は俺のことを無理矢理にでも捕まえようとする初音から逃げ回り、なんとか九時まで粘った。
・・・もちろん俺だけの力で粘れるわけもないので、結愛たちも巻き込む形にした。
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