第621話総明の大変さ
「あっ!そーちゃん!ちょっと良いかな?」
「ん?どうした?」
俺が食事終わりに手を洗っていると、結愛が話しかけてきた。
「うんっ!あのね?ちょっと久しぶりにそーちゃんのお母さんに会いたいなぁって思ったの」
「な、なんでいきなり・・・?」
「昔そーちゃんのお母さんにはお世話になってたけど、何も恩返しできてないなぁってふと思ったの、だから今度何かの形で恩返しできたらなぁって」
「あぁ、そう言うことなら今度の日曜日初音と───────」
「初音と?なんでここであの虫の名前が出てくるの?」
し、しまった・・・
「じゃ、じゃなくて!初音とじゃなくて・・・そ、そう!俺のお母さんは日曜日の時常に元気だなぁって、は、はは・・・」
「じー・・・」
結愛が明らかなジト目で俺のことを見ている。
・・・完全にやってしまった、なんであそこで口を滑らせてしまったんだ俺は・・・!
「へぇー、そうなんだねっ!いつまでも健康で居て欲しいねっ!」
「・・・え、あ、そ、そうだなー」
「・・・・・・」
良かった・・・なんとか誤魔化すことに成功したらしい。
「あっ、で、話を戻すけど俺のお母さんに会いたいなら後でいつ予定が合うか聞いてみ───────」
「それはもういいよ」
「・・・え?い、いいのか?」
「うん、目処はついたから」
目処・・・?
「それよりっ!そーちゃん!明日の朝食べたいものとかあるっ?」
「えっ・・・今さっき今日の夜ご飯食べ終わったばっかだろ?」
「そうだけどっ!そーちゃんのことはいつでもどこでも早く知りたいのっ!」
「それにしても早すぎるだろ!?」
寝る前とかに聞かれるならまだしもついさっき野菜炒めと三色丼を食べたばっかりの状態で聞かれてもお腹がいっぱいなためパッと食べたいものなんて思いつくはずもない。
「ないかな!?」
それでも構わずぐいぐいくるらしいな・・・仕方ない。
「わ、悪い、ちょっとさっきご飯を食べたばっかであんまりパッとは思いつかないからまた寝る前とかに────────」
「食べたいものあるよね!?例えば人間のメスとか女とか幼馴染とかっ!」
「そういう冗談はやめろ!」
「私真剣だよ?」
「え・・・」
なんていうか・・・いきなり空気感が変わった。
「そ、そうか・・・で、でもやっぱり人を食べるとかって表現をするのは良くないと思うんだ」
俺はそれらしいことを言ってみる。
「食べるって性的な意味でだよ?」
「そんなことはわかってる!」
「冗談だよ〜❤︎」
結愛は小さく笑いながら洗面所を後にした。
「なんなんだ・・・」
もうとっくに手を洗い終えていた俺も、洗面所から出て、自分の部屋に戻った瞬間───────部屋の中でお経を唱えるかの如くぶつぶつと独り言を話している初音がいた。
「もしそーくんのお母様にそーくんとはどのような関係と聞かれた場合は恋人関係、もしくはそれ以上を所望し合う関係、これからそーくんとどんな風になりたいかと聞かれたら2人で愛を高めあっていきたい、もしそーくんが余計なことを言いそうになったら困るからその時は後ろに包丁でも押し当てれば─────あっ!そーくん」
あっ!そーくん。じゃない!
なんだなんだ今すごすぎるパワーワードが聞こえてきたような気が・・・
いや、気にしないようにしよう。
日曜日まで日曜日のことを深く考えたくない・・・
その後、俺は初音と一緒に寝る・・・と言ってもほとんど俺が抱き枕のようにされていただけだが、一応は初音と一緒に寝た。
・・・段々暖かくなってきた、これが恋人の温もりというやつなのだろうか。
「・・・っ”」
・・・段々苦しくなるようにして息が苦しくなってきた、これが睡眠というものだろうか。
「はぁはぁ・・・」
段々呼吸ができないほど首が締まってきた、これが愛の苦しみ──────
「って!苦しい苦しい!締まってる!締まってるっ!!」
「そーくぅん・・・」
初音はどうやらもう眠ってしまっているらしい。
・・・大変な1日から少しの間だけでも解放されるかと思ったのに、なんで睡眠すらままならないような生活を送らないといけないんだ・・・!
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