第600話カップル限定プチ文化祭!?

「・・・は、は?な、なんだ?これ・・・」


「なんですかね〜?」


 俺とあゆが学校に到着してまず目にしたものは、異質なポスターだった。


『7月6日!カップル限定プチ文化祭!!』


「・・・カップル限定プチ文化祭?」


 な、なんでこんな中途半端な時期に文化祭なんだ・・・?

 いや、そこよりもカップル限定って・・・明らかに学校側の行事じゃなくて生徒のおふざけにしか見えない。


「へぇ〜!面白そうですね〜!」


 あゆはノリノリそうに言う。


「ま、待て待て、テンション上がってるところ申し訳ないけどこんなの絶対生徒のおふざけだと思うぞ?」


「生徒〜?生徒ならやっぱり生徒代表の生徒会の人とかが企画考案したんですかね〜♪わかってますね〜♪」


「生徒会って・・・」


 こんな企画を考えるような人が生徒会に入れるわけがない、そもそも生徒会メンバーのことをあんまり知らないけどそんなことを考える人がいるわけ──────


「もしかして白雪先輩が結構前から先輩といちゃいちゃするために企画してたのかもしれませんね〜」


「・・・あ」


 そうだ、そうだった・・・初音も一応生徒会副会長、しかも実質生徒会長よりも権力がありそうな感じなんだった・・・


「まぁ〜今はもう学校では私と先輩もカップルですし〜?参加しちゃっても良いんじゃないですかぁ?」


「・・・え!?い、いやいやいや!さ、流石にそれはまずいだろ・・・?」


「まずいって・・・なんでですかぁ?」


「なんでですかって・・・」


 仮にさっきあゆが言った通り初音が俺と一緒に楽しく遊ぶためにずっと前から計画してたことならその楽しくなれることをあゆと一緒に過ごしてしまうのは初音的には浮気だ。

 俺たちはあくまでも表面上恋人ってだけで、本当の恋人じゃないだ、そこまでしてしまうと初音に怒られるどころか酸素抜きの寝袋に入れられかねない。


「と、とにかく!さ、参加はしないからな!」


「え〜、なんか男性陣の中で厄介な彼女対策会議とかも開かれるらし──────」


「よし!すぐに行こう!!」


 俺は急いでポスターの案内通りに足を進める。

 ただただ浮気を疑われるリスクがあるだけなら行かないつもりだったが、誰かに相談や救助を求められるなら話は別だ。

 俺には出なかった考えが出てくるかもしれない。

 そう思い至った俺は、実施場所である本棟ではない特別棟に足を進め・・・


「お、おお・・・」


「わぁ〜!すごいですね〜!」


 そこは思いの外賑わっていた。


「・・・・・・」


 周りの話を小耳に挟む限りだと、どうやら今日の授業は復習系ばかりのようで少子化を防ぐためにカップルを増やしたいなんていう絶対に言わされてる感が半端ないような理由でこの行事が許可されているらしい。

 そしてあとついでに、恋人がいない人は授業に参加しないといけないらしく、授業を受けたくない男女が協力して一緒にここに来ているらしい。

 ・・・本当に初音には恐れ入るな・・・


「あっ!先輩!フランクフルトありますよっ!」


 あゆは俺の腕を引っ張って、その屋台の目の前に行く。


「フランクフルト2本ください!」


 あゆがそう言うと・・・


「2本で300円になりまーす」


「・・・えっ」


 どうやら取るところはしっかりと取るらしく、お金を要求してきた。

 俺はただでさえあゆにいきなり学校に来るよう言われた挙句、こんな行事があったことなんて全く知らなかったため、お金なんて持ってきていない。


「はーい」


「・・・えっ!?」


 するとあゆは1万円札が何枚も入っている財布を取り出し、300円を店員さんに渡した。


「ありがとうございまーす」


 店員さんはそうマニュアル通りの言葉を言うと、作業に戻った。


「はい、先輩っ」


 フランクフルトが俺の目の前に差し出されてきた。


「え、も、もらっても良いのか?」


「もちろんですよっ!」


 あゆは笑顔で言う。

 ・・・まぁ、久しぶりに息抜きするのもいいな。

 俺はそう思い、あゆに差し出されているフランクフルトの下の棒の部分を握る。


「いただきま〜す!」


「・・・ちょっ!な、何してるんだ!」


「何がれふかぁ?」


 あゆはアイスでも食べるかのようにフランクフルトを舐めたり口の中に入れては出したりしている。


「何がじゃない!その変な食べ方をやめろ!」


「あぁ〜!もしかして卑猥なこと想像しちゃったんですかぁ?えっちですね〜!私ちょっと熱いのが苦手なのでこうしないと食べれないんですよ〜」


「そ、そうなのか・・・?」


「嘘ですっ♪」


「っ!だったら余計にそんな食べ方やめろ!」


「だってこんな熱くて太い棒見てたら先輩の──────」


「ややや、やめろっ!こ、こんなところでそんな変な話をしなくていいっ!」


 俺はあゆが落ち着くまであゆの口を塞ぎ、落ち着き始めてきたところでお互いにフランクフルトを完食し・・・


「ほ、本当に行くのか・・・?」


「もちろんじゃないですかっ!」


 あゆの提案により、カップルお化け屋敷という謎の名前のお化け屋敷に入ることになった。

 ・・・まぁ、高校生が作ったお化け屋敷なんて、前に初音と一緒に行った遊園地のお化け屋敷と比べれば、全く怖くなんてないだ──────


「うわああああああああああああああ!!」


「ちょっ、せ、先輩、冗談ですよね?これただの紐ですよ?」


 あゆは若干引き気味に言う。

 く、暗いところで物に当たればそれがなんであれ怖いものは怖い。


「・・・先輩、ドキドキしてきましたね・・・❤︎」


「ドキドキじゃなてドクドクの間違いだろ!」


 そんなことを言いながら、俺たちはようやく光射す場所に着いた。


「よ、ようやくゴールか・・・」


 俺はすり減った体力でお化け屋敷を出───────


『中間地点 待機所(防音でベッドもあるので何をしても大丈夫ですよ)』


「・・・って、え?」


 そこには待機所と書かれた看板があるだけで、出口の気配は一向にない。


「ま、まだ続くのか・・・」


 ここが地獄か・・・


「先輩、ここって防音でしかもそこにベッドもあるので何をしても良いらしいですよ?」


「そうか・・・ならちょっとベッドで休もう・・・」


 俺はこの看板に書かれてある通り遠慮なくベッドに横たわらせてもら──────え。


「あ、あれ、なんで電気が消え───────」


`チュッ`


「っ?」

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