第597話総明の忖度

「・・・ん?」


 そういえば今日小姫さんってどうするんだ?

 もうだいぶ夜の時間帯だけど、もしかしてこのまま泊まっていく気なのか・・・?


「・・・・・・」


 冗談じゃない!

 結愛たちだけでさえこんなにも大変なのにそこに小姫さんまで加わったりしたら俺は冗談抜きで過労死してしまう。


「こ、これは上手く小姫さんを泊まらせないように誘導しなければ・・・」


 俺は何故かずっと冷蔵庫の横にしゃがみこんでいる小姫さんのところに向かった。


「え、えーっと、さ、小姫さん?」


「何」


 端的に、だが明らかに歓迎されていないことはわかるような声音で言う。


「そ、その・・・きょ、今日のご予定は・・・?」


「今日?もう夜だから今日は終わりでしょ?」


「あ、そ、そうなんですけど・・・」


 遠回りに聞いても仕方ない、ここは直接聞こう。


「今日は、その・・・と、泊まって行くんですか・・・?」


「うん」


 うん、じゃないだろ!!

 なんでさも当然のように泊まっていくことが決定してるんだ!!


「え、な、なんでですか・・・?」


 俺はできる限り小姫さんの機嫌を損ねないように聞く。


「なんでって・・・私ぐらい可愛い女がこんな時間に外に出たらいつ君みたいな不審者に襲われるかわからないでしょ?」


 色々と気になるところはあるけどそんなところを一つ一つツッコミを入れれてもキリがないのは短い付き合いでもわかったらスルーするとして・・・


「じゃ、じゃあ俺が家まで送れば問題ないのでは・・・?」


 俺は今導き出せる最善の策を言ったつもりだが・・・


「うわ、そうやって私の家知ろうとしてるの?キモッ、やってることストーカーと同じ手口すぎて本当に引くんだけど」


「なっ・・・」


 それもまた小姫さんのひねくれたというかなんというかの口八丁により封殺されてしまう。

 ・・・たとえどれだけ封殺されたとしても、俺は小姫さんをこの家にとどめるわけにはいかない・・・

 そんなことをしたら毎日のように罵倒されて俺のメンタルは持たないだろう。


「さ、小姫さんぐらいに綺麗な人を襲うなんて失礼なことできる人がいるわけないじゃないですかー」


 と、俺が忖度してみるも・・・


「そんな失礼なことをできる人を不審者って言うんでしょ、不審者の不審って意味もわかんないとか、僕何歳かな?」


「っ・・・」


 俺が忖度しても全く意味がないな・・・でも俺はこの程度で諦めるわけにはいかない、俺の未来のメンタルがかかってるんだ。


「そ、そうですねー、は、はは、俺がバカでしたー、そ、そんなバカな俺と一緒の屋根の下で生活するなんて嫌ですよねー」


 あそこまで言われたんだ、小姫さんだってここでさっきまであんなに罵倒してきてたのにそれを前言撤回することはできないだろう。


「・・・べ、別に、そ、そうでもないよ?」


「・・・は?・・・は!?さっきまであんなに色々と悪口言ってきてたくせにそんないきなり手のひら返しなんて無しだろ!!」


「は、はいぃぃぃぃぃ、調子良くてごめんなさいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」


 ・・・もうどうにでもなってしまおう。

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