第594話夜に電話

「はぁ・・・」


 俺は1人自分の部屋の中でため息を吐く。

 今日も本当に疲れたな・・・このしんどさでまだ夜8時とか冗談だろ?


「でもまぁようやくちょっとは休憩できる時間──────」


`プルルルルル`


「・・・ん?」


 電話・・・?

 自分の部屋に入ってまずすぐに自分の携帯を充電したからスマホに電源がついてる事自体に不思議はないけど・・・


「誰からだ?」


 時間帯は夜、しかも俺が普段関わっている人ほとんどが今この家の中にいる、電話してくる理由がない。


「・・・師匠か?」


 俺は電話して来ている相手は師匠だと思いながらスマホの画面を見─────


「って、え!?」


 スマホ画面を見た俺は、思わず声を上げてしまっていた。


『学校』


「・・・・・・」


 学生なら誰しもが、一度は学校からの電話というものにドギマギした事はあるだろうが、俺の場合は夜8時というイレギュラーな時間、しかも約2週間ほど初音が許可を取っているとはいえほとんど不登校のような状況・・・

 正直この電話に出たら何を言われるのかわからないな・・・


「い、一回ぐらい無視しても良いよな、よ、夜だし、うん・・・」


 俺はそう自分に言い聞かせ、結局その着信音が鳴り止むまで何もしなかった。


「・・・そろそろ行ったほうが良いよな・・・」


 足だってかなり治って来てるし、このままじゃ勉強も遅れに遅れて初音と霧響の言う通りのダメ人間になってしまう。


「よし・・・!」


 俺は明日にでも学校に行くことを決め、早速勉強に取り掛かろうと思い学校用の鞄の中から教科書とノートを取り出し、机と向かい合った。

 ・・・が。


「せんぱ〜い」


「えっ」


 鍵は閉めたはずだ、なんであゆがこの中に入ってこられてるんだ・・・?


「ど、どうやって中に入って来たんだ!?鍵は閉めてたはず───────」


「せんぱ〜い、甘いですね〜♪」


 そう言うとあゆは俺の部屋のドアの縁から固まった接着剤・・・ゴムといったほうが表現の正しいものを剥がして見せた。


「な、なんだそれ・・・」


「ん〜、簡単に説明すると〜、これ張ってるとドアがちゃんと閉まらないんですよ〜」


 誰がどんな理由で作ったのか理由がわからなすぎるな・・・


「あ、因みに自作です〜♪」


 1秒で謎が解決した。


「・・・そ、それで、な、何の用なんだ?」


「はいっ♪夜這いに来ました♪」


「あぁ、そうか────って、え!?よよ、夜這い!?」


「だって〜、挿れるのには失敗したとしても〜?女の裸を見たならもう1回も2回も変わりませんよね♪」


 な、何を言ってるんだあゆは・・・!


「ま、待て待て!変わりあるに決まって───────」


`ギュッ`


「・・・え?」


 あゆが唐突に俺に抱きついてきた。

 い、いきなりどういうことなんだ・・・?

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