第593話失敗の共有

 結愛はここに匂いを追って来たらしいが、一応ちゃんと来た道も覚えているらしく、俺と初音はその案内に従って帰ってきた。

 すると・・・


「お兄様!」


「先輩!」


「最王子くん」


 玄関に入った瞬間に、その3人が一斉にこっちに駆けつけてきた。

 そして・・・


「うわっ、こんなやつが来ただけで虫みたいに集ってキモッ」


「・・・え?」


 と、なぜか霧響たちの後ろからゆっくりと腕を組みながら玄関に来たのは、ついさっきホテル街で会った小姫さんだった。


「気持ち悪いからそんなに見つめないでくれる?あんたの視線だけでこの世の全皮膚病にかかれそうな気がするから」


 相変わらずの言われようだな・・・

 って、そんなことより、なんでこの家にいるんだ?っていうかなんで霧響たちは小姫さんのことを家にあげたんだ?

 色々とわからないことが多───────


「お兄様、白雪さんと2人きりでホテル街などという場所に行っていたというのは本当ですか?」


「・・・え、な、なんで霧響がそのことを───────」


「そのような反応をされるということは、本当なんですね」


「・・・・・・」


 恥ずかしいとか羞恥とかっていう感情を通り越して・・・なんなんだこの感情は。

 朝早くにホテル街に行って結局何もできないまま家に帰り、そして実の妹にホテル街に行っていたことを追求された時の感情の言語表現なんておそらく今の人類言語では不可能だろう。


「そうですか・・・事は、致したんですか?」


「そ、それは───────」


「そーちゃんはあんな虫なんかには挿れなかったらしいよ!」


「挿れなかったっていうか、挿れようとして失敗しただけだけどね」


「っ!そうなんですね!お兄様!」


「うっ・・・」


 だからなんでそんなところだけ妙なコンビネーションを発揮してくるんだ・・・おかげで俺のメンタルは崩れる寸前まで来てるぞ!軽くトラウマになりそうだ・・・


「挿れようとして失敗って・・・ウザキモすぎて引くんだけど」


`グサッ`


「そもそも彼女居て他の女と同棲って時点でもキモいし」


`グサッ``グサッ`


「・・・本当に死ねば?」


`ブシャッ`


「・・・って!そこまで言わなくたっていいだろ!」


 あ、危ない危ない、メンタルを刺されまくったせいで本当にメンタルが崩壊するところだった・・・


「いれる・・・?」


 天銀は何も分かっていないみたいだった。

 ・・・その純情さをもうちょっとこの女子たちに分けて差し上げてほしい。


「じゃ、私部屋入るから」


 初音は何故か足早にこの場を去ろうとするが・・・


「ちょっと待って、虫」


 結愛の声がその足を止めた。


「・・・何?」


「そーちゃんの子種、鞄に入ってるんでしょ?貸して」


「は?無理」


「でもこのまま虫を1人部屋に入らせたらそーちゃんの子種を使ってそーちゃんの子を孕めちゃうでしょ?」


「え・・・」


 初音はそれを聞いた瞬間、急いで自分の部屋に入ろうとしたが、結愛と霧響の2人がかりで鞄が没収され、約一時間女子4人による鞄の奪い合いが続いた。

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