第591話結愛の詰問
「なな、なんの音だ!?」
「そーちゃん」
「・・・え?」
よく見てみると、部屋の壁面がガラス張りになっているところの一部が割れていて、そこから結愛がこの部屋の中に入って来ている。
「・・・って、え!?ゆゆゆ、結愛!?」
ど、どういうことだ・・・?ここは4階だぞ!?
い、いや、それ以前にどうやってここがわかったんだ!?
て、ていうか窓なんて割ったら器物破損とかで犯罪になるんじゃないのか?
やばい、思考が追い付かない、本当にどうなってるんだ・・・?
「・・・・・・」
結愛は殺気を込めた目で初音のことを見つめ、初音が手に持っている白い液体の入った袋を見た瞬間──────初音の方に飛びついた。
・・・いや、正確には初音の方ではなく、初音が持っている白い液体の入った袋を初音から奪おうとした──────が。
「っ・・・」
「っ・・・!」
初音はそれを難なく──────いや、難なくではなく、割とギリギリな感じで結愛を躱した。
「私がそーくんのおたまじゃくしと戯れてるときにいきなり攻めてくるなんて、もしこれ落として破れでもしたら世界規模の損失なんだよ?」
「そーちゃんのおたまじゃくしってことは、やっぱり・・・匂いと色でなんとなくそう思ったけど・・・」
ラブホテルで白い液体の入った袋があったらなんとなく察しが付くのはわかるにしても匂いでわかるっていうのはどう考えたっておかしい。
「そーちゃん」
「・・・はい」
「・・・ここで何してたの?」
「え・・・」
「大丈夫、怒らないから教えて?」
いやいや、絶対に怒るだろ・・・むしろ怒らなかったら熱でもあるのかと心配になるレベルまである。
「べ、別に何もしてないって」
「え?そーくん、さっきまで一緒に裸で愛し合ってたよね?」
「・・・ま、まぁ、そ、そういう言い方もできるかもしれないな・・・」
俺は一応誤魔化しの言葉を入れるも・・・
「そういう言い方もできるって何?そういう言い方以外に言語表現できないよね?」
「・・・はい」
「・・・そーちゃん」
「・・・はい」
「・・・もしかしてだけど、もう挿れちゃったの?」
「・・・・・・」
これは・・・俺がどう返答してもダメージが来る奴だ。
仮に俺がここで本当のことを言った場合、結愛は特に怒りはしないだろうけどその代わりに俺が一瞬で出してしまったということが露見してしまう。
そしてその逆、つまりは嘘をついた場合でもそれはそれで結愛は怒るだろう。
・・・詰んでるな。
「そーくんが挿れてくれてるなら私は今こんなにテンション下がってないよ」
「・・・そうなんだっ!そーちゃんっ!」
「うっ・・・」
初音が言ってくれたことによってヘタレ的な烙印は押されずにすんだが、なんていうか・・・複雑な気持ちになってしまった・・・
「・・・・・・」
いや、なんで俺だけがこんな思いをしないといけないんだ!?!?
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