第579話土下座でお願い

「・・・・・・」


 そしてこれである。

 たまにこんな感じになるけど、イマイチよくわからない。

 でもこうとなったら言いたいことは全部言わせてもらおう。


「俺にいきなりキスをしたことを謝ってください!」


「ね、ねぇねぇ。そんなことよりぃ・・・こ、ここどこかわかってるよねぇ?ホテルだよ?ラブホテルっ、そんなところに女連れ込んでるんだよぉ?」


「お、女連れ込んでるっていうか・・・そっちが俺のことをホテルに連れてきたんだ、来たんじゃないですか!俺はただ謝って欲しいだけ──────」


「異性とラブホテルに来て何もしないなんていうつもり?ラブホテルのラブの意味わかるかな?愛を育む場所ってことだよ?」


「だから俺はそんなことをしに来たんじゃなくて単純に一言俺にキスしたことを謝ってほしいだけって何度言えば──────」


 俺は何度も言っていることをもう一度言おうとしたが、小姫さんにいきなり腕を引っ張られてしまい、体が小姫さんの方に寄ってしま──────


`パシャ`


「・・・え?」


 どこからだろうか、シャッター音が鳴り響いた。


「って、なんでシャッター音なんてものが聞こえ───────」


「初めてのツーショット〜♪待ち受けにしよ〜っと」


「は、は!?な、何勝手に撮ってるんだ!」


「写真ぐらいで動揺しすぎ、キモ、これで彼女いるとか未だに信じられないんだけど、しかもあんなに大人数で同棲とか・・・ウザ」


 そう言いながら巧みにスマホを操作して、本当に俺とのツーショットと呼んで良いのかわからないツーショットを待ち受けにしている。


「ちょっ、そ、その写真消してくれ!」


「無理」


 と、即答されてしまった・・・


「・・・お、お願いします」


 が、俺もそう簡単に引くわけにはいかない。

 もしラブホテルで他の女性と、それも前にレンタル彼女として会っているこの人とのツーショット写真なんていうものが初音にバレれば・・・死ぬ。


「えっ・・・❤︎逆にいいかもっ・・・❤︎」


 小姫さんは何かを呟くと、ベッドに座り足を組んでいった。


「土下座してくれたら考えてあげる」


「ど、土下座!?」


「私に写真を消してくださいって土下座しながらお願いするんだって、わかる?それとも頭弱いからわからないの?」


「・・・・・・」


 ・・・まぁ、土下座で命が助かるならと、俺は小姫さんの目の前に行き土下座した。


「お願いします、さっきの写真を消してください・・・」


 よし・・・これで俺の命が助かると考えれば安いもの──────


「はぁはぁ、土下座も・・・良い♪」


「ちょっ、あ、あの、写真を消して──────」


「あっ、土下座して欲しかっただけだから、無理♪」


「はぁ!?」


 俺は小姫さんのスマホを奪おうと土下座の体勢から飛びつき──────


「えいっ」


「え・・・?」


 俺は足を引っ掛けられてしまい、小姫さんの方に倒れ────・・・押し倒すことになってしまった。

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