第573話初音と総明は逆

「あぁ❤︎私今そーくんに抱きしめられてるんだね❤︎」


 初音が起き上がってくれないからそうなってるだけなんだけど・・・初音はそれで良いのか・・・?


「えーっと・・・?」


 俺は初音がずっと何かをぶつぶつ呟いているが、それを無視してとりあえずこの初音を抱きしめてしまっているこの状況から早く脱したいと思い、初音の背中で手をまさぐってはみているものの・・・


「ど、どこにチャックなんてあるんだ・・・?」


「ここ❤︎」


 初音が俺の手をそのチャックのあるところまで誘導してくれた。

 ・・・こういう時はものすごく協力的なのがなんていうか複雑な気持ちになってしまう。


「わ、わかった」


 とはいえ俺も早くこの状況からは脱したいため、初音に「誘導された場所に手を置く。


「・・・あった」


 そして俺はそれを下に引いていく。


「あっ❤︎そーくんの手が背中にっ❤︎あっ、今そーくんの生指が私の背中に生で当たったっ❤︎」


「・・・よ、よし、できるところまで下に行った!」


「うんっ、そうだね、じゃあ次はこのワンピースを右と左で分ける感じで背中から出してみて?」


「・・・わ、わかった」


 ・・・なんていうか、俺が押し倒すっていう話だったから俺が主導権を握って雨が降るまで色々と時間稼ぎができればなんて考えてたけど、結局は初音が主導権を握ってる感じがする・・・

 俺は初音に言われるがままに、チャックのところで左右に別れているワンピースを両手で分けて背中から上げた。

 そうすると初音のワンピースは上半身だけ脱げた状態になり、もうあとはそのワンピースをめくれば初音の下着姿が見えるというところだった。


「あぁっ❤︎そーくんに脱がせてもらえるなんて夢見たい❤︎」


「そ、そうか・・・」


 なんで押し倒してるはずの俺のテンションがこんなに低くて押し倒されてるはずの初音の方がこんなにもテンションが高いんだ・・・

 何度も言うけど・・・絶対に逆だろ!


「あぁぁぁぁぁ❤︎これから私はそーくんにめちゃくちゃのどろどろのぬるぬるのぬちゃぬちゃに犯されちゃうんだね〜!きゃぁ〜!」


「・・・・・・」


 本当にどういうテンションなんだ・・・

 俺はしばらくそんな初音をぼーっと見ていると、初音が鋭い声で言った。


「なにしてるの、そーくん、早く犯してよ」


「あ、は、はいっ、す、すいません・・・」


 俺は諭されるようにして、ゆっくりと初音のワンピースを下に下げていった。

 すると出てきたのは、もうすでにわかっていたことだが初音の上の下着だった。


「はぁはぁ❤︎興奮してきたぁ❤︎」


 だからそのセリフも普通なら俺のセリフのはずなんだ・・・


「ねっ!ねっ!次はっ?次はどうするの?下を脱がせるの?それとも上から前戯してくれるのっ?!」


 そ、そういえば前もぜんぎ・・・?って言ってたけどどう言う意味か調べてなかったな・・・

 ぜんぎが何かわからないため、俺は下を脱がせると言うことにした。


「し、下を脱がせる」


「きゃぁ〜!まずは私のことを丸裸にするってことだよねっ!そーくんのえっち〜❤︎」


 本当に過去類を見ないぐらいテンションが上がっている初音を見ながら、俺は外で雨の勢いがさっきよりも少しだけ弱まっていることを目の端で確認した。

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