第569話2度目のラブホテル

 嘘だろ・・・!?た、確かに言われてみれば周りに何時間何円みたいな看板がいっぱいある・・・って!


「なんで初音は冷静なんだ!は、早くこんなところ出よう!」


「そ、そうだね、そーく─────」


`ポタポタポタ`


「・・・え?」


 頬で冷たい水が弾けて伝う感触が─────


`ザァァァァァ`


「えっ、あ、雨!?」


 確かに曇っていたけど、いきなりこんなに土砂降りになるなんて・・・

 ま、まずい、傘なんて持ってきてない!


「嘘!、雨!?予報見てなかったよー!濡れたく無いからとりあえずあそこで雨宿りしよ?」


 そう言う初音に手を取られてきたのは、このホテル街には無数にあるラブホテルのうちの一つだった。


「え、ちょ、初音、ここは─────」


「雨宿りするだけだから別にいいでしょ?それとも、ナニかする気なの・・・?」


「い、いや、もちろんそんな気はない・・・」


「じゃあ・・・行こ?」


「あ、あぁ・・・」


 俺はホテルの受付・・・それもラブホテルの受付なんてどうすればいいのかわからないため、そこは初音に任せた。

 ・・・それにしても、人生で2度目のラブホテルか・・・


「借りれたよ!そーくんっ!」


「あ、あぁ、そ、そうか・・・」


 なんで初音はこんなに元気なんだ・・・?

 いや、俺が寝れてなくてテンションが低いだけなのか・・・?

 そして俺は初音と階段で4階に登り、俺たちに割り当てられた号室に入った。


「そーくん、はい、タオル」


「え、あ、ああ、い、良いけど・・・べ、別にここにいっぱいタオルぐらい常備してあるからわざわざ初音のを使わなくても──────」


「は?ラブホテルなんて他の女がどんな淫乱な使い方してるかわからない場所のタオルをそーくんに使わせるなんてできるわけないでしょ?それともなに?タオル越しに他の女と浮気するつもりなの?」


「え、あ、す、すいません・・・」


 俺はそれ以上は何も言わずに黙って初音に渡されたタオルで自分の体を服の上から拭いた。

 ・・・さっきまでのデートって感じの雰囲気はどこに行ったんだ・・・


「・・・・・・」


 それにしても・・・なんていうか、濡れた初音はやっぱり元が綺麗なだけあってより儚さというか・・・色々付け加えられてて良いな。


「そーくん?」


「な、なんでもない・・・そ、そうだ!あ、雨はどのぐらいで止むんだろうなー」


 俺は誤魔化すようにして視線を逸らし、話題も逸らす。

 初音はその質問に返答するように言った。


「んー、どのぐらいだろうねー、スマホの充電も切れちゃってわからないねー」


「・・・あ、ホテルなんだしコンセントぐらいはあるんじゃないか?」


「コンセントはあると思うけど、充電器を持ってきてなかったの」


「ま、まぁそうだよな・・・」


「ちょっと私、シャワー浴びてきてもいい?」


「え?あ、あぁ、ど、どうぞ・・・」


「うん」


 初音はそう小さく返事をすると、シャワールームに入っていった。

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