第553話甘めの監禁?

「・・・ぇ?」


 いつの間にか眠ってしまっていたらしい俺は、おそらく初音が寝かせてくれたんだろう、布団の中にいた。


「・・・うわっ」


 まさかのお風呂に入ってた時のままか・・・っていうかなんで俺は眠ってるんだ?


「・・・あ」


 そうだ、初音に胸を生で押し当てられて・・・あぁ、あの感触を思い出すとまた恥ずかしくなってくるからやめておこう。


「・・・えっ」


 俺はとりあえず動こうとしたが、ここでベッドに足が拘束されていることに気づく。


「嘘だろ!?」


 手は・・・拘束されてないな。

 見た感じこの部屋にはスマホもないし・・・初音に没収されたのか。


「・・・あの空気感で本当に監禁するのか・・・?」


 最後の方は割と良い感じだったと思うんだけどな・・・

 でもポジティブに考えれば監禁される場所は俺の部屋ってことか。

 それなら前の地下室よりはまだマシだな。

 俺が色々と考え事をしていると、初音が部屋の中に入ってきた。


「は、初音!?な、なんで入ってきたんだ!?」


「なんでって・・・一緒に寝るって言ったよね?」


「・・・じゃ、じゃあさっきお風呂入ったばっかでちょっと喉渇いたから飲み物取ってきてくれないか?」


「泣いて懇願しないとあげないって言ったよね?」


 そこはやっぱりそうなるのか・・・泣いて懇願なんてできるわけがない。


「で、でも初音はどうするんだ?ずっとここにいるんだったらご飯なんて食べられないだろ?」


「別にそーくんのこと拘束してるんだし、一瞬でご飯食べちゃったらそれで終わりだよね?」


 ・・・確かに。

 ・・・でもやっぱりこんなこと口に出しては言えないけど前の地下室監禁よりは何倍もマシだな。

 ベッドなら最悪睡眠も安定できるだろうし、食べ物と飲み物を貰えないにしても絶対に前よりは甘い──────


「じゃあそーくん、腕出して?」


「・・・腕?」


 俺は言われた通り腕を初音に差し出すと、初音はそこに─────注射器を刺した。


「いっ・・・!」


 初音は注射器の中にある液体を俺の腕に注入した。


「な、何を─────」


「まずは30mlからね?」


「・・・まずは、30・・・?」


 初音はなんの話をしてるんだ?


「忘れたの?媚薬」


「・・・・・・」


 あれも本当にするのか・・・!

 え、じゃあ今俺は30mlの媚薬を注入されたのか・・・!?

 た、確かにそう言われると少し暑い気もしてきたような─────


「じゃあそーくん!一緒に寝よっ!」


「えっ・・・」


 初音は俺の返答なんて待っていないとでも言うように俺に抱きつきながらすぐに良い笑顔で眠ったようだった。


「・・・これは」


 ある意味前より地獄かもしれない。

 媚薬なんて注入された直後に初音に抱きつかれて簡単に睡眠なんて無理だ!


「・・・・・・」


 結局、俺は一睡もできずに次の日の朝を迎えることになった。

 ・・・睡眠もできずご飯も貰えない・・・本当に俺は死んでしまうのかもしれないな。

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