第549話彼女と妹

 ・・・え!?

 俺たちのすぐ近くのお風呂場と脱衣所を繋ぐドアが開いた。


「お兄様!・・・に白雪さん!?なぜお兄様に裸体を見てもらえているのですか!?羨ましいです!見ていただけるのであれば私のもお願いしま─────」


 と、霧響は体に巻いていたバスタオルを脱ごうとし出したので俺はすぐに言葉でそれを止める。


「ま、待て待て!脱ぐな脱ぐな!」


「そーくん、どこ見てるの?今私の胸可愛いって私のこと蔑んだよね?」


 そう言って初音は俺の顔を自分の方に向かせた。


「霧響ちゃんの方が私より胸が大きいからそっちに目が行っちゃうんだね、すごい洞察眼だねそんな眼がついてるから浮気しちゃうならその目潰したら浮気なんてしなくなってくれるのかな」


 初音は俺の顔を自分の方に向かせるように手で固定したまま、かなり棒読みの早口というかなり怖い感じで言う。


「ち、違うって!だから何度も言ってるけど妹に欲情なんてするわけ────」


「お兄様、どういうことですか?」


「・・・え?」


 今度は霧響が押し倒されている俺に近づいてきて言った。


「妹に欲情しないとはどういうことでしょう、本当に何度言えばわかるんですか?兄妹なんていうものは関係ないと」


 これは本当に厄介な状況になってるな・・・どっちかを宥めようとすれば絶対にどっちかを否定することになってしまう・・・

 俺は顔は初音の方に向けたまま霧響に話しかける。

 因みに目の前には初音の胸がそのまま見えているが、おそらく俺はこの緊迫感のせいでお風呂から出た頃にはどんな胸だったか忘れていることあろう。


「き、霧響・・・?今はちょっとそれは関係ないというか・・・」


「いいえ、いかなる時も私とお兄様には関係のあるお話です、妹に欲情しないとはどういうことでしょうか」


 ここは霧響を納得させて一旦お風呂場から出て行ってもらうことを考えよう。


「も、もちろん欲情する時もあるけど──────」


「・・・私以外の女に欲情するの?」


「ひっ・・・」


 ただでさえさっきまで生気のなかった初音の目が、今はさらに暗くなっている。

 しまった・・・霧響よりも初音を敵に回さないことを考えるべきだった・・・!

 妹を怖がっているなんて情けない・・・最悪霧響の場合は兄という立場を利用すればどうにでもできるはずだ、それを考えると今一番どうにかしないといけないのは初音からだ。


「っていうのはもちろん冗談で、は、初音以外に欲情なんてするわけないだろ?」


「・・・はい?」


 が、このままではまた霧響の反感を買うことは目に見えているため、俺はすぐにフォローを入れる。


「か、勘違いしないで欲しいのは、それは別に妹だからとかじゃなくて初音`以外`だからな?別に霧響が俺の妹だからってわけじゃない」


「・・・つまりお兄様からすれば私はどこにでもいる雑多と相違ないということですか?」


「いやいや!なんでそうなるんだ!そんなわけないだろ!?い、いい意味で霧響には欲情しないんだ」


「・・・良い意味で、とは?」


「そ、そうだな・・・た、例えば俺が四六時中ずっと霧響の裸とか妄想してたらどう思う?気持ち悪いだろ?」


「いえ、至高です」


 ダメだ、例えを出しても意味がな──────


`もちっにゅ`


「・・・もちっにゅ?」


 俺は感じたことのない感触に疑問を感じ、感触に異変を感じた自分の右手に目を移すと・・・


「なっ・・・!?」


 俺の手は初音のちょうど手のひらで包み込めそうな初音の白くてもちもちそうな・・・いや、もちもちな胸を初音によって揉まされていた。

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