第537話小姫

「小姫・・・?」


 だ、誰だ・・・?少なくとも俺の知り合いじゃない。


「・・・小姫って誰?」


 初音も疑問に思ったのか、俺に問いかけてきた。


「わ、わからない」


 が、当然俺も小姫なんていう人は知らないため、わからないと告げる。


「・・・もしかして浮気相手?」


「・・・えっ!?ち、違う!」


「じゃあ小姫って誰なの?」


「だ、だから知らないんだって」


「知らない人からメールなんて来るわけないでしょ?」


 そんなことを言われても本当に知らない。

 小学生の時の知り合いでもなければ当然生き別れた兄妹なんていうこともない。

 正真正銘俺の兄妹は霧響だけだ。


「・・・浮気が露呈したね、そーくん」


「ほ、本当に知らないんだ」


「・・・じゃあメッセージ私に先に見せて?」


「えっ・・・」


「何?不都合なの?トーク履歴に何か見られたら困るようなものでもあるの?」


「そ、それは、ないけど・・・」


「じゃあ見せて」


「・・・・・・」


 俺はその相手のおそらく名前的に女性の人が変なことを送って来ていないことを祈りながら初音にスマホを渡した。

 ま、まぁ流石に相手の人も変なことを送って来たりはしていないだろう。


「・・・っ!・・・そーくん?」


「・・・え?」


 初音は一瞬驚いたような表情をすると、すぐに俺に怒りを向けてきた。


「ど、どうしたんだ・・・?」


「これ、どういうこと?」


 そう言って初音は俺にスマホの画面を見せてきた。


『私、名前小姫って言うからこれからはそう呼んで』

『あと、約束通りあんたの初めて奪うから』


「・・・ん?」


 ・・・え!?これってもしかしてさっきのレンタル彼女の人なのか!?

 っていうか約束って、俺そんな約束してないだろ!

 ・・・あ、でもそういえば責任とってよね的なことは言ってたような気も・・・?って、そんなことはどうでもいい!

 俺がそんなくだらないことを考えていると、初音が話を続け始めた。


「まだ名前教えてる段階ってことは出会い系でもして出会ったの?あと約束通り初めて奪うって書いてるけど約束って何?っていうかこれ女だよね?誰?」


「ちょ、ちょっと落ち着いてくれ、俺はこんな人知らな─────」


「落ち着いて?そーくんから別れ話を切り出されただけでも大問題なのに今度は知らない女がそーくんの初めて奪うって言ってるんだよ?どう落ち着けって言うの?」


 確かに言われてみればすごい状況だな、でも・・・


「お、俺だってよくわかってないけど多分この小姫っていう人はさっきのレンタル彼女の人だと思うんだ」


「・・・それが?」


「え、それが、って・・・?」


「この小姫って女がさっきの女だとして、それがなんなの?」


「・・・え?」


「私はそーくんが私以外の女からメッセージを貰ってるのが許せないの」


 ・・・これは。


「ちょっと本当にそーくん最近ダメだから、そろそろ躾けないとダメかな?」


「・・・・・・」


 こういう言葉の後に本当に良い思い出がない・・・

 そして初音は俺から結愛のことを無理やり引き剥がすことに成功し、躾という名目で長時間息を吸う間もないくらいに長く、俺にキスをした。

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