第535話別れる理由

「い、いや!か、勘違いしないで欲しいのは、別に初音に問題があったからとかじゃなくて・・・俺に問題があったからというか・・・」


「ちょっと待ってねそーくん」


 そう言うと初音は懐から包丁を取り出して言った。


「続けていいよ」


 ・・・怖すぎるけどこれも俺のせいだ、ちゃんと説明するしかない。


「その・・・じ、実はさっき・・・あんまり覚えてな─────」


「そーちゃん?」


 結愛が「言い訳しないで」と言うような目で俺のことを見ている。

 ・・・確かに結愛からしたら俺に変な言い訳は言って欲しくないか、仮にも体の関係を持ってしまったわけだし・・・


「そ、その・・・落ち着いて聞いて欲しいんだけど・・・」


「落ち着いて?そーくんが別れようとか人外語話してるのに落ち着いてって何?無理に決まってるよね?」


「・・・わ、わかった、じゃあちょっと聞いて欲しいんだけど・・・」


 俺は一呼吸置いて、初音にちゃんと説明する事にした。


「実は・・・ゆ、結愛と、その、しちゃったんだ・・・」


「しちゃった?」


 結愛が怪訝そうに言う。


「あ、いや!し、しちゃったじゃなくてしたんだ・・・」


「・・・した?」


 今度は初音が頭にクエスチョンマークを浮かべている。


「その、なんていうか─────」


「あーもう!そーちゃん焦ったいから私が言ってあげるっ!」


 結愛が初音の目の前に出ると、言った。


「そーちゃんは私と初めてを遂げて子種も注いでくれたの、だからもう虫は用済みってこと、むしろこんなに長い間そーちゃんと恋人になれたんだからそーちゃんの優しさには感謝してね」


「・・・は?」


 初音は珍しく怒りよりも動揺が勝ったのか、包丁を握っている手が震えている。


「そそそ、そーくんが、わわわ、私以外の女に・・・子種?」


 初音はしばらくの同様の後、俺に言った。


「・・・殺す前に詳しく説明して」


「殺させないよ、これでようやくそーちゃんは私の─────」


「黙って」


「・・・・・」


 初音が重く冷たい声で言い放つと、結愛も警戒態勢に入ったのか少し身構えてから黙り込んだ。


「そーくん、説明して」


「・・・わかった」


 そして俺はこれが初音との最後の会話になるのかと思いながら、さっき起きた一部始終を説明した。

 結愛にお風呂に連れ込まれたこと。

 お風呂に連れ込まれた後拘束されたこと。

 そしていつの間にか眠ってしまっていて、起きた時俺と結愛は下着姿で一緒に眠っていたこと。


「・・・・・・」


 俺は本当に刺されるんじゃないかと思っていたが、初音は少しの間なぜか動かなかった。

 そして・・・


「そーくん」


「・・・はい」


「よかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「・・・え?」

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