第534話既成事実

「さっきすごかったね、そーちゃん❤︎」


 結愛は俺の口に貼られたガムテープをゆっくりと剥がしたが、正直今の俺はそれどころではなく、結愛が放った言葉で頭がいっぱいだった。

 ・・・子種を、注いだ・・・?

 それってつまり・・・?俺は今寝ぼけてるだけで本当にさっきそういうことを結愛としたのか・・・?


「あっ!そーちゃん、お服着させてあげるね?」


 結愛はそういうと俺のいつの間にか脱いでいた服を着せてくれた。


「じゃあそーちゃん、あの虫のところ行かないとね」


「・・・ぇ、な、なんでだ・・・?」


 気分的に今初音のところになんて行きたくない。


「もちろんそーちゃんがあの虫と別れるためだよ」


「・・・別れる?俺と、初音が・・・?」


「うん」


 これまたなんでいきなりそんな話になってるんだ・・・?


「な、なんでだ?」


「子供ができてるかはまだわからないけどそーちゃん私とえっちしたんだよ?それなのにまだあの虫と恋人で居続けるつもりなの?」


「・・・・・・」


 その事に関しては本当に実感が無さすぎてつい忘れそうになる。

 ・・・でもまあ本当なら確かに今後初音とは付き合っていけない・・・


「私とえっちしたのにそーちゃんが私のことフったりするはずないもんね?」


「そ、それは、そうだけど・・・そ、その、なんていうか・・・実感がないっていうか・・・」


「・・・え?あんなに激しくしたのに覚えてないの?」


「・・・・・・」


 もしかしたら俺は眠ったまま初体験を遂げてしまったのか・・・?


「あっ、でもそういえばそーちゃん途中から本当に気持ちよさそうな顔しててそのまま一緒に寝ちゃったからちょっと忘れちゃってても仕方ないかもね」


 なるほど・・・そういうことか。

 じゃあ俺は初めての快楽でそのまま気絶するように眠ってしまったのか・・・?それはそれで本当に恥ずかしすぎるけど今はそれどころじゃない。

 ・・・俺はとうとうしてしまったのか。


「でも覚えてないで済まされる事じゃないよね?」


「・・・はい」


「あんなに愛し合ったもんね?」


「・・・・・・」


 そこに関してはあんまり覚えてないから返答はしないでおこう。

 そして俺は結愛に手を引かれて初音のいるリビングに連れてこられた。


「・・・そーくん、なんでそのウイルスと手繋いでるの?」


「・・・・・・」


「ほら、そーちゃん、言って」


「・・・そーくん?」


 ・・・これは非常に言いづらいけど覚悟を決めて言うしかない。

 もうそういうことをしてしまった事後なら、覚えてないなんて言い訳にもならない。


「その・・・初音」


「何?」


「・・・わ、別れよう」


「・・・は?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る