第520話総明の悪手
「え・・・」
「そうしたら浮気なんてしてないって信じてあげる」
「え、ひ、人のいる前でするのか・・・?」
「何?できないの?その女と浮気してるから?」
「・・・・・・」
これは・・・キスをしなかったら浮気していると思われて俺が血祭りになるっていう最悪なやつか・・・?
俺がどうしようかと迷っていると、なぜか少女が焦ったような口調で言う。
「え、ちょ、キスするつもり?」
「そうだけど、私たち恋人だし別にいいでしょ?」
「え、いや、初音・・・目の前でするのか・・・?」
「何?できないの?」
「できないっていうか・・・は、初音は恥ずかしくないのか?」
実際俺は人前でキスなんていう大胆なことはできないが、それを言うと浮気を確定付けられてしまうのでそれを言うことはできない。
「恥ずかしくないよ?」
そうだった・・・こういう時の初音が今まで一度として羞恥心を感じているのを俺は見たことがない。・・・どうすれば。
「そう、だな・・・は、裸を見られるって考えたら恥ずかしくないか?」
「そーくんに?恥ずかしくないよ?むしろ見てほしいよ?なんなら見せた─────」
「いや俺にじゃなくて、俺以外の誰かにだ」
「そんなの無理、そーくん以外に見られるなんて吐き気がするからそんなこと言わな────はっ、そういうことなんだね!そーくん!」
初音は何かに気づいたようにそう言った。
よ、よし、これは上手くいったか・・・?
「本当は私とキス以上のことしたいけど私との思い出を他の人に見られるのが嫌なんだよね!」
「そ、そうだ、そういうことだ」
よし!これは完全に上手くいったな、こんなに上手くいくのはもしかすると初めてかもしれない。
これで今キスをするということは回避でき──────
「じゃあ他の人間がいないところだったら私にそれ以上のことしてくれるんだね!」
「・・・え?」
ん、ん?な、なんかおかしな方向に解釈されてないか・・・?
「楽しみー!確かにそうだうよねっ!私とそーくんの大切な思い出を他の人間に共有するなんて嫌だよねっ!」
「え、あ、まあ、そういうことだ」
・・・けど、これはもしかして未来の俺に対する最悪の悪手になってしまったのでは・・・?
「じゃあっ!今すぐにでも他の女がいないところ行こ?ホテルとかがいいかな?」
初音は初々しく言った。
「・・・えっ!?ちょ、ちょっと待て!?」
当然俺は困惑する。
未来の俺に対する悪手っていうのさっき気づいたけどその未来っていうのがまさか今!?嘘だろ!?早すぎるだろ!
「ホテルなら誰にも見られないし断る理由なんてないよね?」
「そ、それは・・・そうだけど・・・」
俺が返答に困っていると、そのやりとりをずっと黙って聞いていた少女が口を開いた。
「男とヤりたいだけなら別れたら?」
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