第515話初音の部屋の前で

 少女は俺の部屋に駆け込むと、内から鍵を閉めた。

 ・・・え?い、いきなりどういう事だ・・・?


「っ!あいつっ!」


 初音は俺のことを抱きかかえながら少女が入って行った俺の部屋に入ろうとするも、どうやら中から鍵を閉められてしまっているらしく開くことはできない。


「・・・ん?っていうかなんであの人は俺の部屋がここだってわかったんだ・・・?たまたまか・・・?」


「そんなの感覚でわかるよ、感覚っていうより勘かな?私なら匂いでわかるけど」


 ・・・匂いでわかるとかいう常識から外れた意見はともかく、勘、勘か・・・

 これがよく聞く女の勘的なやつなのか?男の俺にはわからないな。


「・・・・・・」


 ん?って言うことは女子全員そんなことできるのか・・・?

 ・・・軽く女性恐怖症になりそうだが、俺ほどの異常者付き合いマスターになるとそんなことで臆することはない。


「あー!今頃絶対あいつそーくんのベッドとか服とかをタンスからとって匂いとか嗅いでるー!あー!私のそーくんが汚されるー!」


 そう言って初音は俺を抱っこしたまま暴れる。


「お、落ち着け!?そんなことするわけないだろ!?」


 あ、危なすぎる・・・今落とされたら足の怪我が悪化してしまう。

 初音に冷静になってもらわないと・・・


「そーくんがあんな女レンタルしたからこんなことになってるんだよ!?」


「あ、ご、ごめんなさい・・・」


「もうっ!本当に私が見張ってない場所だとすぐに問題起こすんだから・・・」


 それに関しては本当に何も言うことができない。


「それにそーくんは────!」


 初音は俺にさらに何かを言おうとして俺の顔を見た瞬間に、なぜか言葉が止まった。

 ・・・な、なんだ?


「そ、そーくんの顔が・・・!こんなに近い・・・!」


 ・・・今気づいたのか!?


「そ、それに・・・」


 そう言って初音はさっきみたいに暴れる・・・までは行かないけど何故か体を少し動かし、当然抱っこされている俺もその分動く。


「そ、そーくんの体が私の胸に全体的に当たってるから動かしたら・・・んっ!」


「お、おい!?な、何してるんだ!?」


「そーくんも嬉しいよね?私のっ、胸に体全体を使って触れるんだから!」


 そう言って初音は俺の体をまるで道具のようにして自分の胸に押しつけて動かす。その間、初音は艶のある声を出している。

 ・・・な、何を聞かされてるんだ俺は・・・

 少しの間初音がそうしていると、突然俺の部屋のドアが開いて─────


「あんたたち何してん、のっ!」


 初音は今の今まで興奮していたと言うこともあり一瞬反応が遅れ、その刹那に少女が俺のことを初音から引き剥がして俺の部屋に投げた・・・というよりは引きはがした反動で俺は転び、少女はすぐに部屋の鍵を閉めた。

 ・・・って、え?2人きり・・・?

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