第509話初音の願望

「まず」


「・・・はい」


「性欲が溜まってきたら私に言ってっていつも言ってるよね?なんで言ってくれないの?間違えたとか言ってたけどそれだってちょっとも下心がなかったら私に相談できてたよね?その件はまた後で言及するとしてもせっかくそーくんの数少ない性欲が出てきたならなんでそれをレンタル彼女なんていう他の女に使おうと思ったの?私には使いたくなかったの?なんで?それにそもそもそーくんは自分の価値に全然気づいてないの、去年だって付き合い始めた時は口癖みたいに「白雪さんとは釣り合わない」とか言ってさ、本当に意味わからないからね?初音って呼んでもらうまでにもいっぱい時間かかったんだから、それに最近は他の女とも同棲して、本当に最悪だよね、そーくんからもっとあいつらに「もう俺に関わらないでくれ」とかって言ってくれたら良いのに、そーくんは良くも悪くも優しいからそんなこと言ってくれないし、でもレンタル彼女にまで手を出すようになったならそろそろ私が何しても文句ないよね?今までそーくん浮気してないみたいなこと言ってたけどレンタル彼女を間違えてだとしてもレンタルして私に相談せず隠して他の女と会ってたんだからそれは浮気だよね?さっきだって私が行ってなかったらまた私以外の女に好きなようにされそうになってたでしょ?そーくんはもっと自衛心と自尊心と私以外に対する自制心を高めないといけないの」


「・・・え、あ、はい・・・」


 まずのレベルじゃないだろ・・・


「・・・本当に聞いてた?」


「き、聞いてたって・・・」


 正直途中からもう全く聞いてなかった。・・・というよりは聞き取れなかったが正しいけどとにかく途中からは内容がよくわからなかったな・・・


「じゃあ今私が言ったこと全部復唱して?」


「え、いや、それは・・・」


「もしかして聞いてなかったの?」


「いやいや!あれだけの長い文章を復唱するなんて俺には無理というか・・・」


「私はそーくんの言った言葉一言一句覚えてるけど?」


 それは初音が異常なだけであってここだけは絶対に俺の方が正常だ。


「それは、まぁ、なんていうか・・・初音がすごいんだ」


「・・・すごいんじゃなくて愛の大きさの違いだよね?私は一回も浮気なんてしたことないし」


 そう言って初音は俺のことを生気のない目で見つめて言う。


「そーくんはなんで浮気するの?」


「・・・・・・」


 ここで「俺は浮気なんてしてない」と言っても結局いつもと同じパターンになるだけだろう。ならここはちょっと本音を言ってみるのもありだな。


「そうだな・・・初音の束縛が厳しいか─────」


「は?何それ」


「え・・・」


「私の束縛が厳しいって何?」


「だって本当のこと─────」


「そーくんが浮気なんてしようとするから私が厳しくしないといけなくなってるんだよね?今回の件がまさに良い例でしょ?」


 ・・・ここまで言われてしまっては俺も本気を出して言うしかない。


「初音がなんでも浮気って決めつけるのは良くないと思うんだ」

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