第504話初音からの通話
「・・・・・・」
落ち着け俺、天銀が書き置きを残してくれたのはこの時のためだ。
「か、書き置き見てないか?」
『見たけど』
「そ、そうか、それなら─────」
『最王子くんがレンタル彼女を借りたから謝ると言ってました、って書いてたけど、どういうこと?』
天銀!!!!!差し支えありすぎるだろ!
確かに間違いじゃないけど誤解が生まれる書き方はやめてほしい・・・
『私がいるのにレンタル彼女なんてレンタルしたの?しかも謝るって何?最初から謝る気ならなんでレンタルなんてしたの?そもそもそんなことして謝っただけで許されると思ってるの?』
「ち、違うんだ、実は間違えてレンタル彼女を借りちゃって、それで間違えましたって相手の人に謝ってすぐに初音のところに戻るってことだ」
『じゃあなんで私に相談しなかったの?なんで私に教えてくれなかったの?もし本当に浮気するつもりがなかったなら私に言わない理由がないよね?どう言うことなの?』
「そ、それは・・・」
教えたら初音が怒ると思ったからなんていう理由を初音に直接言うわけにもいかないし・・・怒られるのが嫌で隠れて浮気してたと捉えられるかもしれない。
『とにかく、今すぐ帰ってきて?』
「も、もちろんそのつもり─────」
「ねぇ遅いんだけどー、もしかしてわざと焦らしてんのー?だったらうざいからやめてー」
と、あの人が俺に近づいてきた。・・・まずい!
『・・・そーくん、今の声・・・何?』
「ヘっ!?あ、あー、と、隣の人だな、今ちょっと街中にいるからなー、はは、人が混んでるだ」
『朝の6時でそんなに混んでるわけないよね?』
しまった、冷静さを欠いてその辺のことを忘れてしまっていた・・・
「・・・そう、だな」
『・・・もしかして、今そのレンタルした女といるの?』
「・・・そう───だけど、も、もうすぐに帰るから・・・」
『・・・帰ってきたら、わかってるよね?』
「・・・はい」
『何されても、文句ないよね?』
「・・・・・・」
俺はそっと通話終了ボタンを押した。・・・今日、俺は死ぬ。
もはやあれは余命宣告と同等だろう。
「あっ、やっと電話終わっ─────」
「頼む!早くお金を受け取ってくれ!あっ、あとできれば遺書────は天銀に渡せば良いとして、とにかく!早くお金を受け取ってくれ!」
「は、はっ?ちょっ、ど、どうしたの?」
「は、早く帰らないと死ぬんだ!いや、今から帰ったとしても結果は変わらないけど、できるだけ早い方がいいんだ!」
「え、え?今誰と電話してたの?」
「そんなこと説明する必要もなければ時間もない!悪いけどこっちは命の危機なんだ!!」
「は、はいぃぃぃぃぃぃぃ私なんかに説明はしなくていいですぅぅぅぅぅ」
「だったら─────」
「で、でもぉ、そのぉ・・・じゃ、じゃあ帰らなくてもいいんじゃないかなぁ、なんてぇ・・・」
「なんでそうなるんだ!」
この人は話を聞いてなかったのか・・・?
って、この人の相手をしてる場合じゃない、本当に早く帰らないと死ぬ!と言うより殺される!!
「だってぇ、帰ったら死ぬってことはぁ、誰かに殺されるってことだよねぇ?だ、だったらぁ帰らなかったら殺されることもないんじゃないかなってぇ・・・」
「そんなことしたら余計に酷い方法で殺される!」
俺はお金を無理やりこの少女に渡してこの場を去ろうとするも────
「帰らなくていいって言ってるでしょ?日本語も理解できないなら日本人やめたら?動物になって私に飼われてみる?」
もうこの人の二重人格とも呼べる情緒不安定に付き合ってる暇はない、すぐにでも帰らないと─────
「ぐはっ!」
俺が走ってこの場を去ろうとすると、なぜか俺の首に何かに引っ張られているような締め付けられているような苦しさと痛みが走った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます