第503話少女の事情

「で、でもぉ・・・き、君のお家には行きたいなぁって・・・」


「だからダメだって!」


 どれだけ弱気になってもそこだけは譲る気がないらしい・・・っていうかちょっとさっきから気になってたけど・・・


「なんか、俺の呼び方があんたと君で交互になってるのはなんでだ?」


「は?あんた一応私の年下なんでしょ?」


 またもいきなり切り替わった・・・これはもう、慣れるしかないのか!?慣れるしかないのか!?って、え・・・?


「16歳なんじゃ・・・?」


「そんなのちょっと低く設定してるに決まってるでしょ?」


「そ、そうなのか・・・え、じゃあ本当に年上の人!?」


「うん、私17歳だし」


 うわぁ・・・やってしまったぁ・・・今まで年上の人にこんな態度を取るなんて親以外にほとんど無かったのに・・・


「あ、なんか・・・すいません」


 ここは一応礼儀に習って謝っておこう。


「ちょ、そういうの嫌、別に年齢なんて関係ないから、自然に話そ?」


 年齢なんて関係無いって・・・先に年齢の話をしてきたのはそっちだったと思うんだけどな。


「・・・それはそれとして、早くお金を────」


「だから無理だって」


「じゃあ倍の金額払うから!」


 本当に苦肉の策だけど、俺が持ってるお金全てを使えばギリギリ倍の金額でも払うことができる。


「無理だってば」


「な、なんで・・・お、お金に困ってるからレンタル彼女なんてしてるんじゃないのか?」


「別にお金全く困ってないし、レンタル彼女だって今回が初めてだし?」


「お金困ってないならなんで─────えっ!?今回が初めて!?」


「うん」


 衝撃の事実すぎる・・・なんか遊ぶとか言ってたからめちゃくちゃそういうことをしてる人なのかと思ってた・・・


「もしかして私のこと性行為大好き女だとでも思ってた?で?それ想像したの?それならキモいよ?」


 ・・・何も反論できないけど想像はしてないとだけ言っておこう。


「私まだ処女だし」


 なんでそんなことをいちいち自分でカミングアウトするんだ・・・


「・・・あ、もしかして初めてだったからこんな朝早くからここにいたのか?」


「違う、私家嫌いなの」


 単純すぎる理由だな・・・


「だから帰りたくないの」


 これは本当に帰してくれそうにないな・・・仕方ない、こうなったら帰りたく無い理由を聞いてみてすぐにでも帰りたくなるようにどうにか誘導してみよう。


「なんで帰りたくないんだ?」


「暇」


「・・・・・・」


 これまた単純な理由だった。

 単純な理由故に、こんなのどうやって帰りたくなるように誘導すれば良いのかなんてわかるはずもない。けど・・・


「そ、そんなことないって、色々あるだろ?ほら、本読んだり?映画見たり?勉強したりとか・・・?」


「私本あんまり好きじゃないし映画も好きだけど時間使うし勉強は間に合ってるし・・・あっ、私にどうしても勉強教えて欲しいって言うなら教えてあげてもいいけど?」


「そんなこと一言も言ってないです」


 本当によくわからない人だな・・・


「とにかく、あんたみたいな浮気男に付き合う物好きなんて私ぐらいしかいないんじゃない?」


「だから俺は浮気する気で応募したんじゃないって何度言えば─────」


`ブーブーブー`


「・・・あ」


 俺のスマホから着信音が鳴った。


「ちょ、ちょっと電話に出ても・・・?」


「・・・別に、良いけど」


 不機嫌そうに言うも、電話には出て良いらしい。

 だ、誰からだ・・・?そう思い相手の名前を見る。


『初音』


「〜〜〜〜!!」


 俺は声にならない声をあげる。


「ちょっ、どうしたの?」


「い、いや、な、なんでもない・・・」


 やばい、やばいやばいやばい!とうとう初音が起きた。

 初音が起きて俺が家にいないことに気づいたんだ・・・電話に出ないと後で怒られるじゃ済まない・・・


「い、一瞬だけ電話してもいい、です・・・か?」


「・・・もしかして、彼女?」


「・・・ちょ、ちょっと電話してきます!」


 俺は少女から少し離れ、すぐに電話に出る。すると─────


『そーくん、今どこ?』


 電話越しでも凍るような声で、初音がそう尋ねてきた。

 ・・・や、やっぱりさっきの酔っ払いの男の人より初音の方が何万倍も怖いな・・・

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