第497話初音と霧響の攻(口)防戦
「・・・・・・」
もしここが夢の中なら早く醒めてほしいと切実に思いながら、俺は初音と霧響・・・彼女と妹の本人たち曰く`喧嘩`らしいけど客観的に見ればどう考えても`殺し合い`な2人の喧嘩をもう10分間は見ていた。
「っ!霧響ちゃん・・・!」
`ガキンッ!`
「シャーペンなんてっ、子供扱いしすぎですよっ・・・!」
`ガキンッ!`
「・・・・・・」
なんで俺の周りにはこんなに格闘術というか・・・体術ができる人が多いんだ。
霧響に関しては俺と全く同じ環境で育ってきたはずなのに一体どこでそんな体術を兼ね備えてきたんだ?
「ん」
初音は何かに気づいたような反応をして一度体勢を立て直すと、霧響の目に向けてシャーペンを高速で突き出した。が・・・
「攻撃が単調ですよ」
そう言って霧響は初音に突き出されたシャーペンを右手で掴んで左手に持っているハサミで初音のお腹を刺そうと─────した瞬間、初音の左足が霧響の右下腹部を襲った。
「っ・・・!」
霧響は膝から崩れて右手でその蹴られた部分を抑えた。そして・・・
「はいっ、終わり♪」
初音は霧響の眼前にシャーペンを寸止めで突き出した。
「・・・っ」
霧響が悔しそうな顔で歯噛みしている。
・・・いや、ちょっと世界観を間違えてる気がする。
「霧響ちゃん利き手だからって右側ちょっと警戒緩かったよ?」
さっきの何かに気づいたような反応はそのことだったのか・・・って、そうじゃなくて!
「き、霧響!大丈夫か!?」
俺はすぐに霧響に駆け寄り、霧響の背中をさする。
「はい・・・大丈夫です、ご心配ありがとうございます」
「・・・え」
それを見ていた初音が「え」という一文字の言葉を発した。
「・・・あぁぁぁぁぁぁ!!そーくんに背中さすってもらいながら心配されるなんていうことしてもらえるなら負けとけばよかったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「え、いや、は!?」
「理不尽だよ!なんで勝った私がこんな不遇な扱い受けないといけないの!?」
「む、無傷な人を心配するなんておかしいだろ?」
「・・・私怪我した」
そう言って初音はわざとらしく膝から崩れ落ちて顔を下に向けた。
「は、は・・・?」
「さっき霧響ちゃんにハサミで斬られた」
「避けられました!」
「さっき霧響ちゃんに叩かれたー!」
「叩いていません!」
「叩かれたのーーーー!!!!!」
「叩いていません!!なのでお兄様、心配しないで大丈夫です!!不本意ながら私は白雪さんに体術で完敗したので!!お兄様も見ていたはずです!!」
な、なんだ・・・?なんか今度はまた別の勝負が始まってる気がする。
「叩かれたもん!ほらそーくん!心配して!!」
「ですから!私は─────」
「白雪先輩と妹ちゃんうるさいよ〜」
あゆがちょっとテンション低めな声で言った。
「せっかく人が余韻に浸ってたのにさ〜」
「余韻・・・?」
「はいっ!さっきの先輩の─────」
「あ、わ、わかった、なんとなくわかったから大丈夫だ・・・」
・・・とにかく、これで一旦性的なことは終わりそうだな・・・
「そーちゃんのベット〜!」
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