第498話可愛い二度寝

 俺はあれから少しして、初音にこの謎のリングの鍵をもらってリングを外した。


「はぁ・・・」


 よかった、このまま一生このリングと付き合っていくのかもしれないということも視野に入れてたから本当に良かった・・・


「・・・あ〜」


 俺はベッドに倒れ込む。


「流石に今日は疲れたな・・・」


 もう時間も夜って呼べる時間帯だし、ちょっと早めに寝てしまっていいかもしれない。夜ご飯は食べてないけど・・・別にお腹も特に空いてないしいいか。

 俺は考えることをやめて眠ることにした。


「─────ん!」


「────くん!」


「起きて!そーくん!」


「っ・・・?」


 俺は初音の一際大きな声で起こされた。


「ど、どうした・・・?」


「どうしたじゃないよ!夜ごはん!」


「え、あー、いや、悪い、ちょっと今日眠くてそんなにお腹も空いてないから今日作ってくれたやつは良かったら明日の朝ごはんように冷蔵庫に入れててくれると嬉し─────」


「だーめ!」


 そう言って初音は俺の体を無理やり起こした。


「ちょ、は、初音────」


「そーくんはもっと食べないと!」


「えぇ・・・お、お腹空いてない時に食べ物なんて食べたくない・・・」


「・・・もう、仕方ないな〜」


 そう言うと初音は急に俺の唇を奪った。


「ん〜っ!はい、今日の夜ご飯は私で許してあげる❤︎おやすみ、そーくん」


 そう言って初音は俺のことをもう一度寝かせて布団を掛けてくれた。


「あ、ああ、おやすみ」


 そんな会話の後、俺はもう一度眠りについた。

 ・・・さっきの初音はちょっと可愛かったな。


「───────」


「──────ん」


 俺は目を覚まし、時計を見ると時刻は朝の5時だった。

 5時ならまだ初音も起きてないだろう。


「・・・よし」


 俺は着替えてから、そろそろ歩けるようになってきたため杖のようなものを突きながら右足に重心を置いて歩き、財布を持ってできるだけ音を立てず玄関へ向かう。


「・・・ちょっと早いかもしれないけど、早いに越したことはないよな・・・」


 俺は初音に見つからないうちに出かけてしまうことにした。

 そう─────あのレンタル彼女の件だ。

 確か『7月4日 午前10時』だった気がするな・・・


「5時間もどうやって時間を潰すかだが、まぁどうにかなるだろう」


 そう思い俺は玄関の靴に手をかけ─────


「こんな時間にどこかに用事ですか?最王子くん」


「っ・・・!」


 振り返ると、5時よりもさらに早起きなのか、もしくはまだ寝ていないのかはわからないが天銀の声がした。


「い、いや、その────!?」


 天銀は珍しく帽子を取っていて、服は所々に黄色い星が描かれた青がベースのパジャマを着ていた。どうやら天銀はついさっき起きて俺が移動する物音に気づいて話しかけてきたみたいだ。

 ・・・ついさっきまで寝ていたからなのかわからないが髪の毛もいつもより下りていて、胸元も一応晒しは巻いてるみたいだけど若干はだけている。

 ・・・なんというか、やっぱり女の子なんだということがわかる。


「どうかしましたか・・・?」


 俺がそんなことを気にしていることになんて全く気づいていない様子で天銀が話しかけてきた。

 できるだけ音を立てずに玄関に移動した音には気づいたのに俺の心境に関しては全く気づかないんだな・・・


「な、なんでもない・・・」


「そうですか・・・?それはそれとして、これから何処かに用事でも?」


「・・・いや、その・・・」


「別に白雪さん達には何も言いませんので、僕で良ければ力になります」


 流石の洞察力だな・・・俺が何も言わなくても俺の考えてることを的確に当ててくるな。

 ・・・天銀になら素直に話してもいいかもしれないな。

 俺は素直にレンタル彼女の件を天銀に話すことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る