第486話霧響とキス
「・・・き、霧響?」
「なんでしょうか」
「お、脅して婚約するなんて霧響は望んでないんじゃないか?そんなの本当の愛じゃないだろ?」
本当の愛なんていう単語男が言っても気持ち悪いだけかもしれないけど、霧響を説得するためにはかなり強いワードになってくれるはず・・・
「確かに、脅して手に入れた愛よりも脅さずに手に入れた愛の方が価値があるとは思います」
「な、なら─────」
「ですが、お兄様はそうでもしないと法律なんていう下らない理由で私との婚約を認めてくださいませんし、そもそも愛なら元々ありますがお兄様が婚約をしてくださらないだけです」
・・・つまり、霧響の言いたいことは俺が霧響とは兄妹で法律的に結婚できないからと婚約を断るから仕方なく脅している、そして脅して手に入れた愛ではなく元々俺が霧響を愛していてこれはあくまでも婚約をさせるためだけの手段だと言う。・・・道理はあるけど無茶苦茶すぎる・・・
「私はお兄様と幸せになりたいだけです、なぜわかっていただけないのでしょう」
なぜわかっていただけないのでしょうは俺のセリフだと思う。
「確かに結婚の重要性はわかるけど、一緒にいるだけでもいいんじゃないか?それが兄妹として生まれてきた唯一の利点だと思わないか?」
「思いません、妹として見られている限りお兄様は私と性行為をしていただけないという最悪の呪いです」
その言葉を聞いて俺が少しの間黙っていると、霧響がとうとうその言葉を発した。
「では、この音声を白雪さんに渡してきますね」
そう言って立ち去ろうとする霧響の手を俺は掴んで動きを止める。
「ま、待て待て!?」
「なんですか、婚約または結婚、性行為以外の話でしたら聞く耳はありません」
とても兄妹の会話に出てくる文章とは思えないな・・・だがここは俺も勇気を出さなければいけないところだろう。
「き、霧響がしてほしいことを婚約とせ、性行為以外ならなんでも聞くからその音声を消してくれ!」
「・・・なんでも、ですか」
そう言うと霧響は俺の方に振り返り、言った。
「では私と長らくしていないキスをしてください」
「い、いや、それは性行為─────」
「おかしいですね?お兄様は普段私のことを妹と言って婚約はできないと申していますがその理論だとお兄様は妹とキスをして何かを意識してしまう、ということになってしまいますよ?それが違うと言うのキスぐらいできるはずです、できないと言うのであればお兄様は私のことを異性と認め、婚約もできるということです、大体少し前にお兄様には私を恋愛対象として見ていると認めていただいたはずですが何故こうも何度もお話ししないといけないのでしょうか、それが不思議でなりません、そのことはまたいずれ話すとしてとにかく私とキスをしてください、なんでもとおっしゃったのはお兄様です、ご自分の発言に責任を持たれないようであれば身内である私以外にそんなお兄様を一生支えていける人がいますか?答えは否です、むしろ他の人の迷惑になってしまいます、なのでここでキスをしないとおっしゃるのであれば大人しく私以外との恋愛は諦めてもらい私とだけ恋をしてください、何も私とだけ接して生きろとは言っていません、私と婚約さえ結んでいただけるのであれば、白雪さんでも桃雫さんでも天銀さんでもあゆさん・・・は元々危険人物ですが、とにかく誰と接しようと私は何も言いません、ですから私と婚約をしてください、絶対にお兄様に不服な思いはさせませんし、離婚以外の申し出ならなんでも言う事をお聞きします」
「・・・・・・」
変だな、なんで性行為はダメっていう条件付きだったのにキスを望まれてる挙句それを断れば婚約というところにまで条件を勝手に付け加えられてるんだ?
でもどこにもおかしなところはないから反論できない・・・そ、そうだ、落ち着け、妹にちょっとキスするなんてどこの家庭にもあるだろ・・・ってあるわけないだろ!
・・・でも、仕方ない。
「わ、わかった、キスをしよう」
「・・・では、お兄様」
そう言って目を閉じる霧響の唇に俺は────自分の唇を重ねてしまった。
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