第485話霧響との婚約論争
その後初音は結愛の胸を掴む────いや、引き裂こうとするような勢いで結愛の胸をロックオンして攻撃しているも、結愛もそれをなんとか防御しているという状態が続いている。
「・・・ん?」
霧響が静かに俺を呼ぶように少しだけ開いているドアの外で俺のことを手招きしている。・・・このままこの場にいても怖いことしか起きなそうだし、大人しく霧響の指示に従っておこう。
俺はゆっくりと這うようにして部屋を出た。車椅子に乗ってしまうと、音でバレてしまうかもしれないからだ。
そしてリビングに着いた時、霧響が言ってきた。
「それでお兄様、そろそろ結婚の大事さというのをわかっていただけましたでしょうか」
「・・・・・・」
ここで「わかった」と言うのは簡単だが、そうなると霧響は必ず「では婚約してください」と言ってくるはず・・・
それよりはまだここで「わからない」と言って先延ばしにし、霧響を説得できる時間を増やす方がいいな。
「わ、わからない・・・け、結婚しなくても気持ちがあって一緒にいればいいんじゃないか?」
「・・・お兄様」
「ん?」
「死にたいんですか?」
「えっ・・・」
霧響は虚な目で俺のことを見ながら言った。
「あんなに話したのにまだわかってもらえてないんですね・・・」
・・・こ、これはもしやしなくても答え方を間違えたのでは?
まずい、これはすぐに言い方を修正しなければ・・・
「いや、その・・・け、結婚の重要性はわかってるんだけど、き、霧響と結婚する場合は別に形式的には結婚せずに一緒にいればいいんじゃないかなぁって・・・」
俺がそう言うと、霧響の目に若干の生気が戻り、霧響が言った。
「そういうことですか・・・お兄様が私との結婚を真剣に考えてくれているのは本当に喜ばしいですが、一緒にいるだけ、なんて何の意味もありません」
「え、な、なんでだ?」
別に結婚なんてしなくても想いがあればいいと思うんだけどな・・・まぁ、霧響に恋愛感情があるのかと言われれば返答に困るけど・・・
「想いを具現化する行為こそ結婚というものだからです」
「・・・・・・」
「そして、この世には不条理ながら年齢というものが存在します、なので今の段階では私たちは結婚をすることができないので婚約をしましょうと言っているのです」
「で、でも─────」
「お兄様に拒否権はありません、これがあるのを忘れてしまいましたか?」
霧響はそういうと、手元にある録音機を弄って音声を流した。
『霧響・・・あっ、やばい・・・で、出る、や、やめっ・・・』
・・・本当に最悪だ。
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