第484話同棲中の浮気疑惑

「ちょっとだけって何?ちょっとで浮気しよとしたの?」


「ああ、いや、今のは言葉の綾で・・・」


 ま、まずいことになったなぁ・・・匂いってなんなんだよ匂いって。

 別に結愛は特段匂いの強い香水とかをつけてたわけでもなかったのになんでわかるんだ?しかも興奮してたのかどうかまで・・・

 どう考えても人間の嗅覚のその先を行っている気がする。


「そーくんは誰と浮気したの?」


「だ、だから浮気なんてしてない・・・」


 けどキスをしてしまったのは申し訳ないけど・・・


「でも後ろめたいことがあるから気まずそうにしてるんでしょ?」


「うっ・・・」


「それに、他の女と何かしら関係を持った時点で浮気だからね?」


「・・・はい」


「それで?誰と浮気したの?」


「・・・・・・」


 くっ、ここまで問い詰められて言わない方が不自然か・・・


「う、浮気してはないけどゆ─────」


「そーちゃん、そろそろ────・・・え?」


「え・・・」


「・・・・・・」


 結愛が唐突に部屋に入ってきた。・・・そうか、さっきちょっとだけ部屋から出てくれって行ったから普通に戻ってきたのか・・・なんと間の悪い・・・


「そーちゃ────」


「そっか、そーくんをたぶらかしたのはやっぱりこのウイルスだったんだね」


 初音はゆらゆらと立ち上がると、結愛の方に飛び付こうとするが─────俺は危ないものを感じ、初音をできるだけ抑えることに専念する。


「離して!そーくん!」


「離さない!」


 ここで離したら絶対に血みどろな展開になるのはわかってるんだ・・・


「・・・え、そーくん、もう1回・・・」


「・・・え?だから離さないって─────」


 すると初音は後ろから初音を抑えていた俺の方に振り返り、俺に抱きつきながら言った。


「うん、離さないで?そーくん!」


 初音は俺の顔に自分の顔を近づけようとするも、結愛がそんなところを見逃してくれるはずもなく、乱入してくる。


「ちょっと、虫なんだからそーちゃんに触れないで」


 と、結愛は初音を俺から引き剥がした。


「・・・ほんっと邪魔、虫はどっち?」


「そっち」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 2人は一目置いてから、一斉に違いに刃物を取り出して互いを攻撃し始めた。


「こいつさえいなかったら・・・!」


「この虫さえいなかったら・・・!」


 皮肉にも互いの思ってることは全く同じだった。


「大体!そんな贅肉でしかそーくんを翻弄できないくせにしゃしゃり出てこないでよっ!」


「何それ、ないものねだり?」


「殺すっ!」


 客観的に見てみると、結愛は挑発とかではなく本当に疑問に思ったみたいだった。・・・つくづく思うけど、本当に相性悪いなこの2人。

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