第479話結愛の暗い所
「そーちゃんっ!あのねあのね!」
俺が1人自分の部屋で今何かをすると裏目にしか出ない気がするので適当にトランプでも弄っていると、結愛が身を乗り出す勢いで話しかけてきた。
「ど、どうした?」
こんなにハイテンションなら少なくとも嫌な話でないことは確かだろう。
「うん!私胸が大きくなったみたいなのっ!」
「あ、へ、へぇ〜」
・・・いや、うん。別にそれでハイテンションになってもいい、なってもいい、けど・・・なんでその話を俺にするんだ。
普通そこは結愛も女の子なら恥じらいを持ってとか以前にそもそも何も言わないのが普通だろ!俺に言われても反応に困るだけだ!
「・・・触ってみたい?」
「えっ・・・」
そ、それは、その・・・触ってみたいか触ってみたくないかで言うなら当然触ってはみたい。でもそんなこと口にできるわけもない。
「べ、別に・・・」
「恥ずかしがらなくて良いからね!そーちゃんのための胸なんだから!」
その後、少しの沈黙がその場を包み、結愛が重たい空気で言う。
「ねぇそーちゃん、あんな虫のどこがいいの?」
「どこがって・・・や、優しいところとか?」
「ちょっと他の女と話しただけで殺そうとしてくるのがそーちゃんにとって優しいの?」
その言い方だと俺が究極の変態みたいになってしまうからやめてほしい。
「そうじゃないけど・・・」
「私の方があの虫なんかより優しいよ?」
確かに優しさと言う面では結愛の方が優しいかもしれない。
「ま、まあ・・・」
「じゃあ他のいいところはあるの?」
「他・・・あ、頭がよかったり料理がうまかったりとか?」
「私だってそれなりに勉強できるしお料理だってそーちゃんの好きなもの作ってあげられるよ?」
・・・確かにそれもそうだ。結愛は頭もいいし料理も上手だ。
「じゃあ、他は?」
「・・・い、一途に俺のことを想ってくれて────」
`ガンッ`
「ひっ・・・」
結愛が右手で力強くテーブルを叩いた。
「何それ、私があんな虫なんかよりそーちゃんのこと想ってないって言いたいの?」
「そう言うわけじゃ────」
「今まで私はあの虫みたいにそーちゃんの気持ちを無視なんてしたくなかったからあんまり強硬手段とかとってこなかったからそーちゃんには私の愛情よく伝わってなかったのかな?」
記憶喪失にするのは十分強硬手段に含まれるとは思うけどそれ以外は確かに今思い返せば初音ぐらい強硬手段をとってきたってことはあんまりなかった気がするな・・・でも。
「だからそうじゃなくて────」
「いいよそーちゃん、じゃあちょっと今から無理やりするね」
「えっ、だから────」
「大丈夫、多分最初無理やりにでも背中を押せばそーちゃんだって私の愛情に気付いてくれると思うから」
「・・・・・・」
結愛は車椅子に座っている俺を、ゆっくりと持ち上げてベッドに移した。
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