第477話下着が欲しい理由
「・・・えーっと、は?」
俺は一瞬、天銀が何を言ってるのかわからなかった。
あの俺の周りで数少ない常識人である天銀が下着をくれだなんて普通に考え言う訳が無い。
────そうだ、言うわけがない、だから何か理由があるはずだ。
「な、なんでだ?」
「・・・理由は二つあるのですが・・・」
良かった、理由があった。しかも二つもある。
「先ほど、最王子くんのタオルを囮にしたことは最王子くんの記憶にも新しいと思います」
「そ、それはまぁ・・・」
囮っていう言い方はちょっと気になったけど、特に気にせず天銀の話を聞く。
「そしてそのタオルは討論の末に桃雫さんの手に渡ったのですが・・・」
初音が結愛に言い負かされたのか・・・?
「その理由が「私はもっとそーくんの大事なものをもらうから、タオル程度で取り乱したりしないの」ということでして・・・」
滅茶苦茶に興奮気味になってたことはなかったことになってるのか?それともあれでも初音の中では取り乱してないという分類なのか・・・それはないな。
「そこで僕に「せっかく男友達ってことで一緒に住ませてあげてるんだからそーくんからうまく下着の1つぐらい貰ってきて」と言われまして・・・」
なんだその無茶振りかつ横暴な要望は・・・
「なるほど・・・それで、2つ目の理由っていうのは?」
「そ、それはですね・・・」
さっきまでは気まずそうに話していた天銀だが、今度は急に赤面になりながら話し始めた。
「い、今のところはお風呂などに入ってる時下着などを普段着ている服に重ねて見えないようにしているので僕の性別を疑われるようなことにはなっていません」
「なるほど・・・?」
「で、ですがお風呂に入っているときなどに脱いだ服などを見られてしまうと、女性用の下着があることがバレてしまいます」
「確かにそうだな」
「なので、カモフラージュとして1日に1枚ほど最王子くんの下着を頂きたいんです、もちろんお風呂に入っているときに自分の下着などは隠してあくまでもカモフラージュとしておくだけなので普段から着用するわけではありません」
「・・・・・・」
な、なるほど・・・天銀がそっち系の変態じゃないと再認識できて安心したけど・・・どんな理由があっても異性に下着を渡すと言うのはかなりハードルの高いことだ。
だが、もはや俺と天銀は一蓮托生。
天銀が女性だとバレたが最後、今まで天銀が男子だと思われてたから許されていたことが、全てひっくり返って俺に返ってくる。それだけは絶対に避けたい。
「わ、わかった、そう言うことなら下着を貸す」
「ありがとうございます・・・」
天銀は恭しく言うと、一礼してから洗面所を後にした。
・・・これがまた新たな火種にならないことを祈ろう・・・
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