第475話霧響からの要求

 リビングで椅子に座っていると、とある2人が話しかけてきた。


「お兄様、昨日の件でお話が────」


「せんぱ〜い、ちょっと話が────」


「「っ!」」


 霧響とあゆがほとんど同時に話しかけてきて、お互いがお互いの言葉に遮られるような形でその場が沈黙した。


「妹ちゃ〜ん?ちょ〜っと大人のお話があるから後にしてもらえるかな〜?」


「そちらこそ、お兄様の今後に関わるお話がありますので後にしてもらえますか?それと、一つしか歳が違わないのに大人と言われても困ります」


「前にも言ったけど、一つ違うだけでも全然違うんだよ〜?」


「それを俗にこじつけと言うんです」


 ・・・こっちはなんていうか初音と結愛のやり取りよりは過激ではないけど、俺には感じ取れない裏というか、そんな感じのところで色々と言い合ってる気がする。


「・・・妹ちゃん、もうちょっと先輩に対する礼儀っていうのを身につけた方がいいんじゃないかなぁ〜?」


 どの口が言ってるんだ。


「そちらこそ、私とお兄様はこれから家族として大事なお話をするので空気を読んでいただくということを覚えてほしいです」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 無言の圧がすごいな、別に話すだけだったらいつでもできると思うんだけどなんで皆ここぞとばかりにそれを譲れないんだ・・・?

 でも俺としてはどちらと話しても良い予感はしないけどどちらかで言うとあゆと話したいな。

 霧響には昨日散々結婚の話をされて多分今日もそういう系の話だろうからな・・・


「・・・ではあゆさん、今日はあなたが料理を作ってもいいので大人しく引いてください」


「は〜い♪」


 あゆはそう軽く言うと、キッチンの方に向かっていくような素振りを見せた。


「えっ、あ、あゆ?」


「・・・テヘッ」


 あゆは軽く舌を出し、左目を閉じながら言った。

 ・・・そうか、最初から俺に話なんてなく誰にも邪魔されず料理をしたかっただけなのか・・・ということは強制的に俺は霧響と話すことになってしまった。


「・・・さて、お兄様」


「・・・はい」


 俺は霧響に超地雷であるあの18禁な音声を握られてしまっているため、下手なことは言えない。


「昨日の結婚に関するお話ですが、理解していただけましたか?」


「あ、あー、ああ、もちろんだ」


「・・・歯切れが悪いですね」


「い、いやいや!本当に理解したって!」


「・・・では昨日話しましたことを踏まえて、私と婚約をしてください」


「・・・・・・」


 とうとう言われてしまった・・・ど、どうする、あの音声を握られてしまってる以上ここで霧響の機嫌を損なうわけには・・・

 でもここでとりあえず「わかった」とか言ってその場凌ぎをしても後で実は録音されてたとかだったら更に詰みだ・・・


「き、霧響・・・?婚約なんて中学生じゃまだできないんじゃない────」


「口約束で結構です」


「・・・・・・」


 ・・・くっ、こうなったら霧響の弱点を久しぶりにつくしかないな・・・

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