第473話一線を画す初音
俺はすぐに結愛から離れて言う。
「ちちち、違うぞ初音!これはたまたまというか間が悪いというか・・・」
「間が悪いって何?もし今私がここにいなかったらどうしてたの?」
「そ、そういう意味の間が悪いじゃなくて、その─────」
「そーくんが私の胸を揉んでから私に抱きついて私を押し倒してくれたんだから邪魔しないで」
確かに言ってることは合ってるけど言い方がどう考えても誤解を生む言い方だからそこはしっかりと修正していただきたいところだ。
「・・・そーくん、わかってるよね?」
「わからないー!そーちゃんは今私と体でお話ししようとしてたんだから虫の言う事なんて聞いてないー!ねっ、そーちゃん、あんな虫なんて無視して早く・・・シよ?ほら、はやく脱いで!」
「・・・・・・・」
俺はこの2人の真逆の空気感に気圧され、思考が完全に止まってしまった。
・・・と言うより、ただただどうすればいいのかわからなかった。
初音の誤解を解けたとしてもそうなると結愛が怒る、このまま何もしなければ初音はずっと怒りを通り越した何か状態になってしまい俺は生命の危機に瀕することになる。
「・・・そーくん、もう浮気したってことでいいの?」
「してない!」
俺が初音にそう否定すると、結愛が俺の右袖を引っ張りながら言った。
「ねぇ、早くー、ここまでしてお預けなんてずるいよー」
「だ、だから俺はそんなことするつもりは────」
「そーくん、誰と話してるの?私の目を見て私と話して?」
「・・・はい」
俺は初音の目をしっかりと見る───が、さっきまでは目を合わせないようにしていて気づかなかったが初音の目は完全にハイライトが消えている。
その目は俺を見ているのか・・・物理的には俺を見てるが、その目に何が写ってるのかは全くわからない。
「そーくん最近浮気多いよね」
「お、俺は浮気なんてしてない・・・」
「私はこんなにそーくんだけを愛してるのになんで伝わらないのかな?」
「だから俺は浮気なんて─────」
「浮気したらどうなるかまだわかってないんだね」
だめだ、全く俺の話を聞いてないどころかむしろネガティブな方に進んでいる・・・初音がポジティブな時はポジティブな時で困るけどネガティブの時はそれ以上に怖い・・・
「わ、わかってる・・・」
「じゃあわかった上で浮気してるんだね」
「だから俺は浮気なんてしてない!どうやったら信じてくれるんだ?」
俺はとうとうパニックになり、大声で言った。すると初音は即答した。
「私と性行為」
「・・・それ以外で」
「じゃあ私に餌付けされる」
「・・・餌付け?」
「うん、正確には薬漬けだけどそーくんに薬を飲ませてその薬が無いと生きられない体にするの、それでその薬は私があげないと手に入らない薬、これならそーくんは私から離れたくても離れられないでしょ?」
「な、何言って────」
「私本気だよ?」
「・・・・・・」
薬漬けにされるぐらいならまだ性行為をしたほうが全然マシだろうな・・・
「初音、その・・・なんでも言うこと聞くから浮気してないって信じてほしい」
「じゃあ性行為して」
初音の頭の中はどうなってるんだ・・・
「ほ、他にもうちょっと何かあるだろ?」
「ないよ、その虫はそーちゃんのことを体目当てとして見てないんだから」
「・・・は?」
初音が一線を超えたような声音で言う。
「そーくんもそんな風に思ってるの?」
「思ってるわけない、初音が俺のことを愛してくれてるのは俺自身が一番わかってることだ、今更そんなことを疑うわけがない」
「んっ・・・!そーくんっ!」
俺が思っていることをそのまま言うと、初音はなぜか活気を取り戻し嬉しそうな顔で俺に抱きついてきた。
・・・さっきの初音は本当に怖かったな。
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