第462話初音は総明を立たせたくない

「・・・そろそろ立てるか?」


 俺はそろそろ右足は痛みが引いてきたので右足に重心を置いてテーブルとかを支えにして立ってみることにした。


「うっ・・・」


 まだちょっと痛いか・・・別に無理に立つ理由なんてないんだけどそろそろ立てるようになりたいっていうのとあの変なバイトで相手の人に謝りに行く時にも相手が車椅子よりはまだ杖とかの方がマシだろう。・・・多分。


「よし・・・このままリビングまで・・・」


 俺はゆっくりとテーブルから手を離し、ゆっくりとリビングに向かう。

 俺の部屋から出て、リビングに着いた────と思った瞬間に、初音に話しかけられる。


「そーくん!?何してるの!?」


「そろそろ歩く練習を────」


「ダメダメダメッ!危ないよ!」


 そう言って初音は俺のことを無理やりリビングのソファーに座らせた。


「でも────」


「そーくんはずっと足が動かなくてもいいのっ!」


「・・・え?」


 なんだそれは、どういうことだ?


「私気づいたんだけど・・・そーくんの足が動かなかったらそーくんの行動範囲も狭まって私も見逃すことがほとんどないから浮気する確率が減るの」


「・・・それで?」


「だからそーくんは足が動かないぐらいがちょうどいいの」


「・・・・・・・」


 ・・・え?本当に朝のあの良い雰囲気はどこに行ってしまったんだ。

 でもこの感じで行くと初音は適度に俺の足を折るとかっていうことをしてきそうだな・・・止むを得ない。


「ま、待ってくれ、立てるようになったら俺がキスする約束を忘れたのか?」


「うん?忘れるわけないよ?」


「な、なら俺が立てないとキスできないよな・・・?」


 こ、これでなんとか説得できれば・・・


「・・・そうだね、そーくんが立てないとダメだね」


 よ、よし!説得できた!あとはもう一押し!


「だったら─────」


「────でも、そーくんが歩ける必要はないと思うよ?」


「・・・え?」


 ど、どういうことだ・・・?


「立てるようになる必要はあると思うけど、そーくんは歩けなくていいの」


「なんでだ・・・?」


「だって────」


 初音は俺の隣に座ったかと思ったら、俺に這い寄ってきたので俺はなんとなく体を全体的に後ろに退く。

 ・・・が、初音は俺の顔を右手でなぞるようにしながら言った。


「歩けなかったら私から離れられないでしょ?」


「・・・・・・」


 本当に朝の良い感じの雰囲気はどこに行ってしまったんだ・・・


「い、いや、でも・・・な?」


「何?」


「・・・い、一緒にプールに行く時とか歩けなかったり足が動かなかったら困るだろ?」


「えっ?!プール!?2人で!?いいよっ!いつ行くの?」


「えっ、いや、そういう話じゃ─────」


「ん〜、じゃあ7月の夏休み入りぐらいにしよっか!その頃にはそーくんの足も治ってるよね!」


 そう言って初音は機嫌良さそうに自分の部屋に入っていった。・・・ま、まあ、初音を説得できただけ良かったと考えよう・・・2人でプール、か。

 ・・・嫌な予感しかしないな。

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