第456話霧響は触りたい

 なんとその後霧響とあゆは昼過ぎまで口論を続けた。もはやそこに論理なんて言うものは存在なく、感情論の言い合いになっていた。


「私はお兄様の妹だからお兄様を管理する権利を生まれ持った時点で持ってるんです!」


「先輩と私は生まれた時点で赤い運命の糸で結ばれてて惹かれあったの〜!」


 こんな具合に、さっきまでは重苦しい空気だったのにいつの間にかこんなよくわからない言い合いになっている。


「お兄様もお兄様ですっ!」


 と、今度は俺にまで火の粉が降ってきた。


「な、何がだ?」


「無理やりとはいえなぜ触られてしまってるんですかっ!私だって触らせていただいたことなんてないのにっ!」


「だ、だからあれは不可抗力で別になんの感情も入ってないからセーフ───」


 ここであゆはマウントを取ることができると思ったのか、ゲームならカットインが入りそうなタイミングで割り込んできた。


「先輩のあんな惚気た顔初めて見たな〜」


「なっ・・・!」


「妹ちゃんは兄弟である限り永遠にあの顔を見ることはできないんじゃないかなぁ〜?」


「お、おいっ!」


 それは霧響の地雷だ・・・


「・・・お兄様?」


「え?な、なんだ?」


 霧響が重い雰囲気で俺を呼んだので、俺もその雰囲気に合わせて聞き返す。


「私にもお兄様のを見せて、触らせてください」


「だ、ダメに決まってるだろ!」


「・・・私が妹だからですか?」


「妹とか関係なく他人に見せるものじゃない」


「・・・この方には見せたのに、ですか?」


「・・・・・・」


「お兄様の中ではこの方の方が私よりも優先順位が高いんですか?」


 何を言っても今は逆効果にしかならない気がしてきたけど何もしなければ妹にあれを見せて触らせなければならなくなる。


「そ、そうじゃないけど・・・ほ、本当にあれは無理やりで────」


「先輩あんなに気持ちよさそうな顔してたじゃないですかぁ〜」


「・・・・・・」


 さっきまであゆを救世主だと思ってた自分のことを殴りたいとすら思えてきたけどここはぐっと堪えよう。


「無理やりかどうかなんてどうでもいいです・・・出したんですか?」


 そういえば初音にもそれを聞かれたな・・・


「な、なんの話だ?」


「誤魔化すということは出したと判断してよろしいですか?」


「ま、待て待て!出してない出してない!」


「・・・そうですか、安心しました」


 そう言うと霧響は俺に近寄ってくると、俺の上着のボタンを外していった。


「えっ、え?」


 霧響の行動が理解不能で、しばらく呆然としていると霧響は言った。


「まだ出していないのであればお兄様の子種は私が頂きます」

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