第455話あゆが見たアレ

 その後も霧響はあゆに対して様々な口頭手段であゆを籠絡しようとするも、あゆは全く動じず、いつものように人を小馬鹿にするような態度で躱した。


「はいっ!もう妹ちゃんも言い分なんてないよね〜?」


「っ・・・」


「じゃっ、大人しく私と変わってくれるかなぁ〜?」


「「・・・え?」」


 俺と霧響は同時にそんな声を出す。・・・いや、え?俺を助けてくれるためにやってると思ったけどこれはもしや・・・?


「・・・・・・」


 嫌な予感がしてきた。いや予感じゃない、もうこれは絶対に的中している。未来視と言っても過言ではない。


「妹ちゃんに先輩の管理なんて任せられないし〜?でもかといって白雪先輩たちを言いくるめられたとしても肉弾戦に入りそうだし〜?それなら遅く来て妹ちゃんだけを言いくるめてっ!私の目的である先輩を独り占めってわけ♪」


 ・・・悪魔だな。


「いいえ、そうはいきません、元より私はお兄様に反省してもらうまでここを離れるつもりはありませ─────」


「ならそこで私と先輩が濃厚なキスをしてから一緒に眠るところ見ててね〜?」


「そんなことさせません!」


「妹ちゃんは先輩のアレ見たくないの〜?」


「・・・アレ?」


「アレ」


「・・・・・・」


 霧響は俺のことを鋭い眼光で睨んできたので、俺はそれを横に流す。


「・・・えっ?まさか・・・お兄様?」


「私は見たよ〜?先輩のアレ、すごかったなぁ〜先輩らしいっていうか、可愛くてビクビクしてて生きてるみたい─────」


「っ・・・?!」


 霧響はいつの間にか俺の顔の目の前に自分の顔を持ってきていた。

 特に俺の体に触れたりはしてないが、全身を覆い尽くされているような威圧感を感じる。


「お兄様、今の話は本当ですか」


「・・・ほ、本当っていうか、無理やり────」


「触られたのは本当なんですね」


「・・・そうだ」


「・・・・・・」


 霧響は一度俺の顔から顔を離すと、大声で言った。


「ならっ!もう私も性的な意味で我慢する必要ないですよね?今までは性的な面では遠慮してきましたが、そろそろ良いと言うことですよね?むしろ性的なことをしていない私の方が遅れてると言うことですよね?それならもう良いですよね?してしまっても良いですよね?」


 な、なんだこの圧力は・・・


「ま、待て待て、兄弟でそんなことして良いわけ────」


「最悪の場合、子供を作れなくともそれ以外の行為であれば問題なくできます」


「だから精神的に問題が────」


「そんなことを言っている場合ではありません、とうとうお兄様の貞操の足元に火の粉が付きました、賽は投げられたということです」


`パンッ`


 と、部屋中に乾いた音が響いた。それは、あゆが両の手のひらを合わせた音だった。


「はいはい、そんなに性欲があるなら妹ちゃんならいくらでも男釣れるって、だからいい加減────先輩と私の邪魔しないでくれるかな?」


「はい?私はお兄様以外の男性になんて興味ありません、そちらこそそのような思考になるのであれば私の邪魔をしないでいただけますか?」


「・・・・・・」


 それは、もはや修羅場なんて言葉すら掠れるほどの何かだった。

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