第452話拘束の中

「・・・あ」


 いつの間にか眠ってしまっていたみたいだ。手を拘束されて足も動けずやることもなければ仕方ないこと・・・!?


「き、霧響!?」


 霧響が俺に抱きついたまま眠っている。う、嘘だろ?引き離そうにも手を拘束されてしまっていては引き剥がせない。


「・・・ぅっ」


 しかも時々抱きつく力の強弱が変わったりするため意識しないようにするのも難しい。


「ぅぅ・・・お兄様ぁ」


「・・・寝言か」


 夢の中でも俺の夢を見てるとは・・・たまに本当に可哀想になってくる。

 霧響は間違いなく俺になんてかまけてなければ将来有望すぎるぐらい有望だ。・・・いや、俺にかまけていても有望すぎるぐらいだ。

 だから時々俺が兄で申し訳なくなってく─────


「痛い痛い痛い痛い!!」


 霧響の俺を抱きしめる力が更に強くなった。「そんなことないです」と否定するように・・・って、本当に痛い。


「痛い痛い!霧響!離してくれ!!」


「・・・お兄様?」


 霧響は目を擦りながら起き出した。よ、よかった、あのまま圧迫しするかと思った、まあ痛みのおかげで胸を意識せずに済んだのは幸いだったな。

 ・・・そうだ、今の寝ぼけてる霧響になら・・・


「な、なぁ、霧響、反抗して悪かったから許してくれ」


「ダメです」


 すぐに霧響はいつもの霧響に戻り、キッパリと言い切った。


「トイレに行きたいんだ・・・」


「・・・そういうことでしたら私`同伴`でトイレにお連れします」


「え!?いやいやいや!妹の前でトイレなんてできるわけ────」


「妹・・・?」


 しまった、これは霧響の地雷だった・・・


「あー、いや、女の子の前でトイレなんてできるわけないだろ?」


「でしたら我慢してください、本当の極限状態になればそのようなものどうでも良くなるものです」


 くっ、やっぱりそんな簡単には抜け出させてくれないか。・・・仕方ない。

 両手が縄で拘束されているとはいえ、ベッドに手錠で繋がれてるわけじゃないため一応腕ごとなら手を動かすことができる。

 ちょっとスマホを弄ってこの時間を───ん?


『バイト日程決定報告』


「・・・・・・」


 あれか、あのレンタル彼女を指名してくださいとかっていう意味のわからないやつの日程が決まったのか。確か7月中旬って話だったけど・・・正式に決まったんだな。えーっと・・・?


『7月4日 午後1時 詳細欄から指定の場所を確認してください』


「・・・え?」


 7月・・・4日?中旬って話はどうなったんだ?

 明明後日なんていくらなんでも急すぎる!


「どうかしましたか?お兄様」


 霧響が俺の反応を見ていて不思議に思ったのかスマホを覗こうとしてきたのですぐにスマホの画面を閉じた。


「な、なんでもないなんでもない」


「・・・そうですか」


 危ない危ない、妹にレンタル彼女を応募したなんてバレたら本当に一生死んでも死にきれないぐらい恥ずかしい・・・絶対に隠し通さないと────


`ドッ`


「・・・え?」


 その瞬間、俺の部屋のドアが綺麗に外れた。

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