第450話霧響にはわかること

 ・・・そう、あれは本当に地獄だった。

 またあんな思いをするぐらいなら、いっそのことプライドを捨ててしまう方がいい。しかも今回は前回とは違って明確に解放してくれる条件があるんだ、しかも口で言うだけ。それと餓死を我慢するのどっちを選ぶのかと言われたら当然プライドを捨てる。


「ダメです、誠意がこもってません」


 バレてしまった・・・


「で、でも誠意があるかどうかなんてどうやって判断するんだ?」


「そうですね・・・その時は私ならわかります、お兄様のことならなんでもわかりますからお兄様のお顔を見て私に本当に謝罪する意があるのかということとか、あとは私を求めているとかでもいいですが、そうならなかった場合永遠に餓死寸前でいてもらいます」


 なんだその地獄は。死なせてすらくれないのか・・・いやでもそういえば俺を本気で殺そうとしたのは今までは大体初音だ・・・たまに霧響も殺す的なことを言ったりはするけど最終的には殺したりはしない。

 結愛もそう言ったことはしない。・・・が、初音は本気で殺してくる。

 それがいつもは怖いけど、今回に関しては餓死寸前で永遠に、っていうのが怖すぎる。俺を殺す気がないならそもそもこういう危ないことをやめて欲しい・・・

 でもこの際だからずっと疑問に思ってたことを聞いてみよう。


「な、なあ、霧響、霧響は一応俺のことを嫌ってはないんだよな・・・?」


「何を言ってるんですか!その逆でお兄様のことを愛してします」


「な、ならなんで愛してる相手を苦しめるんだ?」


 今まで何気に初音とかにも聞いたことがなかった質問だ。今までは愛している相手が苦しむのを見て喜ぶなんて頭おかしいと思ってた・・・いや今も思ってるけどその理由も理解せず頭おかしいと決めつけるのは間違いだ、ちゃんと理由を聞いておく必要がある。


「なぜって・・・苦しめば誰かを頼りますよね?」


「・・・ん?ああ」


 まあそれは助けてもらえるなら助けてもらうだろう。


「つまりその頼れる相手を`求める`ということですよね?」


「・・・んん?」


 さあ、理解できなくなってきた。


「どうしようもない状況で私を求めて欲しいんです、あと純粋に苦しんでいる姿が可愛いというか・・・言葉では表現できないものを感じるんです」


「・・・えーっと、何語だ?」


「日本語ですが?」


「だ、だよな・・・」


 同じ言語で話してるはずなのに意味が理解できないなんてことがあっていいのか?・・・いや、意味は理解できるが納得ができない。


「・・・で、解放はしてくれないのか?」


「今の話を聞いていなかったんですか?」


「・・・・・・」


「・・・・・・」


 どうやら本当に解放はしてくれないみたいだ。・・・こうなったら大人しくしてるしなかいな。

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