第448話霧響の憤慨

「・・・え?お兄様?」


「どうした?」


 霧響が今まで類を見ないぐらい顔を青くしみるみる血の気を引いていく。


「そ、その足・・・ど、どうしたんですか・・・?」


「・・・え、今!?」


 遅すぎるだろ!今はベッドに座ってるけどそれ以外はほとんど車椅子だったのに・・・一体何を見てたんだ。


「てっきり白雪さんがお兄様に対して幼児プレイを強要してるのではと思っていたので・・・お兄様を幼児扱いしたい気持ちはものすごくわかるので特に何も気にしていませんでした・・・」


 わかるのか・・・やばい、つっこまなければならないところが多すぎて思考がまとまらないがとりあえず2つぐらいは言わせてもらおう。


「まずっ!そんな変なプレイするなら車椅子なんて使わない!」


「確かに・・・流石お兄様」


 そんなところ流石とか言われても全く嬉しくない、むしろ侮辱に聞こえる。


「そして次に!幼児扱いしたい気持ちはわかるとか言ってたけどその危ない思考は捨てろ!」


「そう言われましても・・・それは非常に難しいです」


 全然難しくないと思うから早くその思考は捨てて欲しい。


「それよりお兄様、なぜそのような怪我を?」


「・・・・・・」


 まあ別に霧響になら特に隠す理由もないので事情を説明した。


「・・・把握しました、そういうことだったんですね」


 霧響はそういうと、俺の足を優しく人触りしてから俺と一緒に座っていたベッドから立ち上がった。


「ちょっとキッチンに行ってきます」


「ま、待て待て落ち着け!?」


 霧響の性格とこの状況でキッチンに行く理由といったら包丁ぐらいしか思い当たらないため、俺は霧響の左手を握って霧響の動きを止める。


「だってそうなったのはあの2人のせいなんですよね?」


「そ、そうだけど・・・」


「であれば、相応の報いを受けてもらいましょう」


「いやいや!包丁とか全然相応じゃないからな!?」


「骨を折られたんですよ?しかもお兄様の、きっと白雪さんも桃雫さんもその重大な罪を受け止めてくださるはずです」


 ・・・なかなかにわかりにくいけどこれはかなり怒ってる時の霧響だ。

 だからこそそんな状態でキッチンになんて行かせるわけにはいかない。


「だ、大丈夫だって、右足は1ヶ月ぐらい治るのに時間かかると思ってたけど初音とか天銀の応急処置が凄すぎてなんかそれより早く治りそうだし、左足はまだ治らないけど片足が動くようになれば杖とかを使って歩けるし・・・」


「ですから!お兄様がそんな不便な状態にいることが私は許せないんですよっ!」


 霧響は怒ったように言い、俺が握っている霧響の左手を力強く振り払った。


「絶対に粛清しま────ん?お兄様の足が・・・動かない?」


 霧響は少し考えるようなポーズと取った。

 ・・・な、なんだ?この沈黙はなんなんだ?

 俺が不安に思っていると、霧響は俺の方に向き直り、俺の隣に腰を下ろした。


「お兄様」


「・・・なんだ?」


「今日からはこのお兄様の部屋で一緒に寝ましょう、もちろんこのベッドで」


「・・・は?」


 俺はそんないきなりすぎる霧響からの提案に、ただただ疑問の声を漏らすことしかできなかった。

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